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 ホーム(ニュース)根津理恵子のポーランド通信新連載『新しい体験』

新連載 「新しい体験」

 

 皆様こんにちは、根津理恵子です!ワルシャワに留学を始めて早3年半が経とうというこの度、「連載」をスタートさせて頂くことになりました。初挑戦ですのでちょっぴり緊張していますが、ポーランドの生活で出会った印象的な出来事や、私が日々感じていることをお伝えできればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

ワジェンキ公園のショパン像。
春が近いというのにまだまだ真冬の景色です。

 暖かな陽射し、新学期、新しい出会い、桜が満開で美しい日本の春は心が弾み、四季の中でも特に思い出がたくさん出来る季節です。ポーランドはといいますと、信じられないほど冬が長く、ようやく明けたと思ってもほとんど春を感じる暇もなく夏が来てしまうといった感じですから、必然的に冬にまつわるエピソードが多くなります。特に、今冬ポーランドが20年に一度の極寒に襲われ、一時期気温がマイナス30℃近くまで下がったことは、最も強烈な思い出の一つです。ポーランド人でさえも外出を恐れるほどでしたので、いくら冬好きの私にもこれは堪えました。しかしそのおかげで、キラキラ輝くダイアモンド・ダストをこれでもかというほど見られたという幸運もありましたし、記録的な気候を体験できたということで、留学中の貴重な思い出の1ページに刻まれました。

 さて『貴重』といえば、先日出演させて頂いた、あるショパンコンサートでの出来事。 

 ポーランド北西部、のどかな田園風景が広がる町シャファルニャは、喘息持ちだったショパンが療養をかねて、14歳と15歳の夏休みを過ごしたことで有名な地です。そこからワルシャワの家族や友人宛てに書かれたショパンの手紙が多数現存していますが、繊細で観察眼に優れたショパンが観た田園の人々の日常や民俗音楽などが詳細に記され、独特の風刺のきいた文章で綴られていたりもする、大変興味深いものです。

 この手紙をポーランドの高名な俳優イェジィ・ゼルニクさんが情感たっぷりに、時に客席の笑を誘いながら朗読されたのに続き私が演奏・・・というのを繰り返しながら進行していきました。事前に手紙の内容や雰囲気にあった曲が続くよう計画を練っていたのですが、頭で考えていたものを実際「声と音」にしてみるとこれが予想以上に効果的で、曲に対するイメージがよりくっきり見えてきたり、全く新しいアイディアが生まれたりして、驚くやら感動するやら、もう楽しくてしかたありませんでした!

 言葉と音楽の結びつきは頭ではわかっていたつもりでも、これほど身をもって感じたのは初めてだったような気がします。お客様が「演奏だけとはまた違った楽しみ方が出来たわ!」と興奮気味におっしゃっていたのも印象的でした。

 

シャファルニャ・ショパンセンターのコンサート会場

 コンサートの感動体験の余韻に浸りながら、ワルシャワへの帰り道で・・・

 ショパンがシャファルニャ滞在中やワルシャワとの往復の道中で出会い、踊り歌ったポーランドの民俗音楽の数々が、生涯ショパンの心の中に生き続けたことを思い、「ポーランド人であるショパン」を一層強く感じたのでした。

 

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 掲載元:「あんさんぶる」2006年4月号より転載。(あんさんぶる編集室に転載許可済み)
あんさんぶる編集室(
カワイ音楽教育研究会 機関誌)に無断で転載することを禁止します。

 

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