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新連載「ショパンコンクールよもやま話(1)」 コンサート調律師(MPA) 村上 達哉
ショパンコンクールは過去に多くの著名なピアニストも輩出している、日本では最も有名なコンクールで、五年に一度行われています。それは一ヶ月に及ぶコンクールでピアニストは勿論、そのピアノの調整も深夜、早朝におよび、調律師にとっても肉体と精神の酷使の場でもあります。
そんな真剣勝負の調整の中でも早朝の調整には大敵が潜んでいたのです、それはなんと掃除のおばちゃん達!!
調整時間4時間の中でスケジュールを立てて調整、さて重要な調律作業に入り一番デリケートな部分に差し掛かった朝7時、大きな笑い声と共にやってきたポーランドのお掃除おばちゃん軍団!
今まで静寂を保っていた神聖なホールに鳴り響くのは、ピアノの音よりも大きな掃除機の騒音とおばちゃん達の話し声、しかも遠い距離を越えて話す音量の大きさとやら!うるさいな〜という顔で見つめると、満面の笑みでおはよう!のしぐさ。(表情は世界共通じゃないのか??)悪気の無さに文句も言えず、ただ終了するのまで作業を変えて待ったのです。
終わったよ〜、バイバイ!のしぐさであくまでも明るく立ち去るおばちゃん達、その後気を取り直して調律を終え無事終了。
次の早朝の調整の日、スケジュールを変え、うるさくなる前に終わらせようと一時間前の朝五時に調律をスタート、そうするとまたも同じタイミングで登場、今度は朝6時(彼女達なりに気を使って時間を変えてくれたのだろう?)またもバッティング!でも気を使っていても喋る声の大きさには変化なし!
この状況にあきらめる我々にも思わず笑みが・・・、そんなこんなの日々も終わってしまうといい思い出、また五年後に変わらず会えるかと思うとまたわくわくするような気もする!?
でも高笑いはやめてね!御願い!
静寂を好む調律師より
村上達哉 (むらかみ●たつや)
1988年、国立音楽大学声楽科卒業。
1988年河合楽器製作所入社。SKピアノ研究所所属。
趣味:スポーツ全般、絵画鑑賞、映画鑑賞。
特技:声楽テノール(ソロコンサートを中心に、オペラの主役など、年間20くらいのステージをこなす)国際コンクール歴:(主なもの)
・ショパン国際(ポーランド・2005年、2000年)
・ダブリン国際(アイルランド・2006年)
・ラフマニノフ国際(アメリカ・2002年)
・ヴェンナダモッタ国際(ポルトガル・2001年)
掲載元:「あんさんぶる」2006年4月号より転載。(あんさんぶる編集室に転載許可済み)
あんさんぶる編集室(カワイ音楽教育研究会 機関誌)に無断で転載することを禁止します。
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