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パスカル・ドゥヴァイヨン 教授の
『 一度は勉強しておきたいピアノ作品』開催レポート
〜新・ 作曲家別に見る演奏学習法 公開講座シリーズ 〜
第4回
 2020年12月11日(金)10:00 開場 10:30 開講
曲の統一感とは? 〜説得力のある演奏を目指して〜
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

  フランスの名ピアニスト、パスカル・ドゥヴァイヨン教授の『一度は勉強しておきたいピアノ作品』〜新・作曲家別に見る演奏学習法 公開講座シリーズ〜の第4回が開催されました。新型コロナの影響により約7カ月半延期しての開催で、全員がマスク着用、座席の間隔を広くとり、会話をひかえるなど、万全な感染対策がとられていました。教授が通訳の村田理夏子さんを伴って登場され、お話を始めると、静まり返っていた会場が瞬く間にあたたかな雰囲気に。優しい語り口とユーモアに引き込まれていきました。

 その日取り上げられた楽曲は、次の2曲。

・リスト/「巡礼の年」第2年『イタリア』より「ダンテを読んで」

・ドビュッシー/喜びの島

 講座のテーマは「曲の統一感とは? 〜説得力のある演奏を目指して〜」で、具体的なアドバイスがたっぷり盛り込まれた内容となっていました。教授は講座のはじめに、とても楽しそうに語られました。

 「いいですか? ひとつの楽曲はひとつの小説と同じです。作品の効果が途切れないように、緊張感をもち続けて。推理小説の最後まで、犯人を明かしてはいけませんよ。」

 こうして準備OK、講座は本論へと入っていくのでした。1曲目の「ダンテを読んで」について、最初の部分を要約しますと……

 全西洋人の興味の対象である地獄の描写、苦悩、贖罪がテーマ。のちのワーグナーが用いたライトモチーフのように、登場するキャラクターを示すモチーフが、繰り返し用いられている。

 冒頭の下降する増4度は悪魔の音程。この門をくぐるものは一切の希望を捨てよというメッセージを暗示して、地獄と苦悩の世界へ入っていく。悪魔のあざ笑いといえるような要素(25小節目)、地獄へ堕ちた者の嘆き(29小節目)を経て、35小節目でドラマティックにニ短調の本題に入る。ニ短調は死を連想させる調性。52小節目で最初の爆発。悪魔の主題が繰り返され、103小節目でこのセクションのクライマックス、神の主題、贖罪のテーマが嬰ヘ長調で提示される。嬰ヘ長調は光のある調性。(後略)

 ……という具合に、詳細に解説されるのですが、このような曲冒頭から1つ目のクライマックスに至るまでの大きなセクションにあるように、リストが作曲において頻繁に用いた何小節にもわたる長大なクレッシェンドを、どうすれば説得力をもって演奏できるか、のアドバイスに多くの時間が割かれました。そのための4つのトリックとして、「強弱の調節」「力の加減」「絶妙なペダル」「両手間の響きのバランス」が挙げられたのですが、ポイントとしては、頂点を見据えて、早いうちに爆発しないように注意すること、途中でフォルテやフォルテッシモが記されていても、ここは本当に大きな力が必要なのかを絶えず問うこと、その時々で大きな音ばかりを出さずに抑揚を付けて、力の加減を調節していくうちに、結果的には長大なクレッシェンドのように聞こえることなどが、実演を交えながら推奨されました。

 「ダンテを読んで」はこのあとも、悪魔と神との激しいせめぎ合いが繰り広げられ、曲の最終で、善が悪に打ち勝つ。神の勝利という結末を迎え、悪魔はチラッと姿をのぞかせつつ消え去っていく。イメージを喚起する解説でした。

 講座後半のドビュッシー/喜びの島では、共通点のある作品としてショパン/舟歌が挙げられました。光と幸せに満ちていること。そして、曲の一番最初の穏やかなシーンから、一番最後の爆発点へ向けて(演奏時間6〜7分をかけて)、たった1つの“魔法のような”クレッシェンドを実現していること。ドビュッシーはこの緊張を高めていく材料に、ハーモニーとリズムの変化を用いたことを指摘した上で、具体的な演奏法へとお話は展開していきました。

 マスクをしているのを忘れるほど夢中になって聞けた、楽しい講座でした。次回は、フランクとフォーレが取り上げられます。

(H.A.)

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