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ピアニスト 松本和将のロシア名曲選 開催レポート
〜レクチャー&コンサート Vol.2 ラフマニノフ〜
【コンサート】
2019年7月5日(金)18:30開場 19:00開演 
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

   

  本日はここパウゼでは既にお馴染みの、ピアニスト松本和将さんのリサイタルでした。パウゼで開催される公開講座でも「講座」とは思えないエネルギッシュな演奏で、会場に感嘆の声をもたらしていた松本さん。リサイタルとなれば演奏も一段と迫力が上がり、力強さと繊細さのコントラストが見事なピアノの音色を、パウゼいっぱいに響かせていました。

 今回はオール・ラフマニノフ・プログラムということで、冒頭の演奏は有名な前奏曲《鐘》。松本さんは前奏の低音をたっぷりと延ばして会場の注意を惹きつけた後に、とても静かに美しくテーマの旋律を奏で始め、その旋律を今度は「ピアノという楽器はこんなにも鳴るのか」と思わせるほど盛り上げてゆきました。続く《楽興の時》第3番および《幻想小曲集》第1番でも、ピアノの様々な音色を披露しながら、ラフマニノフの哀痛漂いながらも情熱的な音楽を表現されていました。次の《ヴォカリーズ》は、元の声楽曲から様々に編曲されている有名な楽曲ですが、松本さんは最近亡くなられたハンガリーのピアニストであるゾルタン・コチシュの編曲を選んでいらっしゃいました。演奏前にもコチシュへの追悼と敬意のこもったトークが入りましたが、そのトークをさらに超えて魂を感じる演奏でした。前半の最後に演奏されたのは、ラフマニノフの作品の中でも比較的後のほうに創られた《音の絵》からの3曲。非常に技巧的な部分やモダンなハーモニーも目立つ作品ですが、松本さんは卓越した技術で安定感がありつつも粋な雰囲気や力強さの際立つ演奏に仕上げていらっしゃり、休憩明けの会場ではその演奏への驚きと歓びの声が入り混じっていました。

 後半の冒頭では、松本さん自身も最近のアイディアであり挑戦であると仰っていた、《ピアノ協奏曲》第2番のオーケストラパートも盛り込んだ独奏でした。編曲ももちろん松本さんご自身。元々技術的な難所が多いピアノ協奏曲で、さらにオーケストラパートも演奏してしまおうというのは、まさに松本さんの高度な技術でこそ実現できるアイディアであり、演奏からも松本さんのラフマニノフへの敬意が伝わってきました。松本さんご自身も「日頃は自分で演奏することのないはずのパートを、1つの作品として演奏できて愉しい経験だ」と語っていらっしゃいました。その後は《前奏曲》から比較的早い時期に創られた作品23の5曲、後の時期に創られた作品32の2曲でした。松本さん自身は、先ほどのピアノ協奏曲第2番に通じている若い時期の作品を、好んでレパートリーにするとのことでしたが、作品32の2曲で表現されていたような、大変繊細で情熱を秘めた感じの音色も、大変美しく印象的でした。そして作品23の中でも最後に演奏されたト短調と変ロ長調の2曲では、持ち前の迫力で客席を圧倒し、大きな拍手を湧かせていました。

 本来のプログラムの終演後も松本さんの勢いはまだまだ止まらず、アンコールでは「今度のフランスものをメインにしたリサイタルの予兆」と仰って、ラヴェルの《亡き王女のためのパヴァーヌ》に加え、ピアノ曲の全ての中でも難曲だとされている《スカルボ》を演奏されました。松本さんの音楽の世界を存分に味わった、充実の1日でした。

(A.T)

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