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ロシアン・ピアノスクールin東京・
NHK Eテレ「らららクラシック」でもお馴染み
ロシア音楽学者 一柳 富美子 公開講座 開催レポート
〜ロシアピアノ音楽の真実〜
第2回 2018年6月21日(木)10:30 〜 12:30 (開場 10:00)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

  

 ロシア音楽を研究なさっている一柳先生による講座の第2回目が行われました。

まずは、第1回目の講座で集まった多くの質問に答えながら、今一度ロシア音楽の楽譜そしてロシア・ピアニズムについての論説がなされました。

 ロシア音楽の楽譜については、作曲家が求めた音楽と演奏家が使用する楽譜の表記にずれが生じていたことが一柳先生の研究で明らかになり、ラフマニノフ《前奏曲 Op.3-2》とチャイコフスキー《ピアノ協奏曲 第1番 Op.23》が例に挙がりました。ラフマニノフが実際に自身の曲を演奏した録音を聞くと、従来の楽譜の音量が異なっていたことが手に取るようにわかりました。あまりにも衝撃的で誰もが知っているチャイコフスキーの《ピアノ協奏曲 第1番 Op.23》の冒頭の和音も、実は音楽家のジロティが彼の死後に指示したもので、その和音はアルペジオでの演奏を生前の作曲家は求めていたのです。作曲家の頭の中にある音楽像へのオーセンティシティー(真正さ)を追求する難しさを実感いたしました。

 さらに、ロシアの音楽教育の現場をよく知る一柳先生のお話から、音楽院を卒業した先生によって、ロシアの子供たちは保育園の頃からプロフェッショナルな演奏に触れている現状を知りました。ロシアでのピアノのレッスンは初回から生徒と先生両方が暗譜の状態で行われることが多く、そうした音楽への熱意に会場は大いに驚きました。従来は重量奏法のイメージがあった「ロシア・ピアニズム」も旋律を歌わせる演奏法へと変化していることなど、文献による知識だけではなく、常に新たな情報に接している必要があると改めて思い入りました。

 最後に、19世紀末のロシア音楽界の担い手であったスクリャービンやグラズノフ、リムスキー=コルサコフ、リャードフなど10人のロシア人作曲家による《ロシアの主題による変奏曲》を聴きました。ポスト国民楽派と呼ばれるこの音楽は、大規模なオーケストラ編成の西欧に対抗するよりも内輪で小編成な音楽に立ち戻っていると一柳先生は指摘なさいました。今回も観客による質問は後を絶たず、ロシア音楽の研究は多くの人に注目されている議題であるように思いました。

(M.S)

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