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南雲竜太郎 公開講座 開催レポート
シューマン
〜人生を通して探るピアノ曲の魅力〜 
(演奏とお話・全3回シリーズ) 
第3回 結婚に至るまでのクララとの関係と、人生の終焉まで
2014年6月19日(木) 10:30〜12:30
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 

 南雲竜太郎先生のシューマン講座も本日でいよいよ最終回。今回はクララとの結婚に至るまでと晩年という二つの時期にスポットを当て、いつもの通り関連作品の演奏を交えながら、シューマンの人生と音楽の関わりについてお話しいただきました。

 開口一番、「今日はちょっと決意に満ちた思いで来ました」とおっしゃる南雲先生。というのも、今回のお話の主眼が、シューマンという作曲家の精神生活の中でも最もつらいいくつかの局面に切り込むものであったからです。

 9歳年下のピアニスト兼作曲家クララ・ヴィークとの大恋愛の末の結婚はシューマンの人生にとっての一つのクライマックスといえますが、そこに至るまでの過程は一般に「婚約」という言葉から思い浮かべられるような幸せなイメージとは程遠い、深い苦悩に満ちたものだったといいます。講座では、クララの父である恩師フリードリヒ・ヴィークによる執拗な妨害や二人の擦れ違いにまつわるお話とともに、この時期のシューマンの揺れ動く心情がとりわけよく表れていると思われる作品が取り上げられました。演奏されたのは、「葬送行進曲のような表現」(南雲先生)に貫かれた《ソナタ第3番 Op. 14》第3楽章「クララ・ヴィークの主題による変奏曲」、シューマン自身クララに宛てて「あなたへの苦悩のために、結婚式と葬式の鐘が交互に鳴り響く」と語っている〈歌の終わりに〉(《幻想小曲集Op.12》より第8曲)、ベートーヴェンの《はるかな恋人に寄す》からの引用が見られ、クララに寄せる彼の想いが噴出する《幻想曲 Op.17》第1楽章でした。

 講座の後半はシューマンの内面におけるもう一つのデリケートな局面に光が当てられました。結婚後のシューマンのピアノ曲の中には、《子供のためのアルバム Op. 68》(演奏:第13・21曲)のように、彼のよき父親としての側面を映し出すような作品もみられます。一方、彼の後半生に書かれた作品のうちのいくつかは、初期のものとは明らかに毛色の異なる、奇妙な雰囲気を漂わせています(演奏:《森の情景 Op. 82》より第4曲〈気味の悪い場所〉、第7曲〈予言の鳥〉)。もともと躁鬱病の気質のあったシューマンは、晩年には精神を著しく病み、ついにはライン川への投身自殺未遂に至りました。ちょうどこの事件の前後に書かれた作品が、「天使の主題による変奏曲」として知られる《主題と変奏 変ホ長調》です。演奏会で取り上げられる機会は少ないものの独特の美しさを持つこの作品を、南雲先生は同じく最晩年に書かれた《朝の歌 Op. 133》第1曲とともに演奏してくださいました。

 全3回にわたり、シューマンの人生とピアノ曲について様々な角度から考察と演奏を進めてこられた南雲先生。一筋縄では捉えきれないこの作曲家の魅力に改めて開眼させられる、大変興味深い講座となりました。

(N.J.)

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