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音楽雑誌でお馴染の
岸 純信 オペラ講座(全3回)開催レポート
〜ヴェルディ生誕200年〜
2013年6月8日(土) 〜9月14日(土)
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
第3回 2013年9月14日(土)10:30〜12:00
ヴェルディの「瑞々しく美しいメロディ」〜《仮面舞踏会》を中心に
*オペラ化がこれまた難しい、「実際に起きた権力者の暗殺事件」 − スウェーデン国王の暗殺− を題材に、
宮廷の華やかさと人々の暗い怨念を描いた名作。このオペラを世に送った「影の功労者」である、ある劇場支配人の功績も紹介します。

 

 

 1500近くものオペラ作品を研究なさっているというオペラ研究家・岸 純信先生による、ヴェルディ生誕200年記念のオペラ講座の3回目、最終回が開かれました。今回のテーマは、「仮面舞踏会」です。先生の解説によれば、ヴェルディの作品の中でも特にステージが華やかで、衣装が美しく、きらびやかな作りのオペラだそうで、主要登場人物たちの声の対照の妙も味わえるそうです。先生は、その魅力、初演への経緯、物語等々を、1990年にザルツブルク音楽祭で上演された、ショルティ指揮のウィーン・フィル、プラシド・ドミンゴらによる公演の映像も時折使って詳しく丁寧に解説してくださいました。

 このオペラは原作もまたオペラだそうで、フランスの台本作家スクリーブによる台本「ギュスターヴ3世 または仮面舞踏会」を、1833年にフランスのオベールという作曲家がオペラ化してパリ・オペラ座で初演され、100回以上も上演されたそうです。ヴェルディはこの台本は読んだようで、これを基にして台本作家アントニオ・ソンマが新たに台本を書いたそうです。

 物語は、原作と同じように実際に起きたスウェーデン国王の暗殺を題材にしましたが、初演を予定していたナポリでは1850年代当時検閲が非常に厳しく、そうした題材は不穏当で不道徳であるということで拒絶されたそうです。原作のオベールのオペラが検閲を通ったのは、初演当時の数年間だけフランスが自由な空気だったからだということです。

 ヴェルディのこのオペラは1859年にローマのテアトロ・アポッロで初演されましたが、それはローマの興行師でその劇場の支配人であったヤコヴァッチがローマの検閲当局と交渉したからだそうです。しかし検閲を通すために、主人公は国王から植民地の総督に格下げされ、場所もスウェーデンからボストンに変えられました。現代の上演では、役は総督であっても国王と思わせたり、衣装もあくまで宮廷風であったりと、ヴェルディの最初の考えを尊重しているそうです。

 この12月にはイタリアからトリノ王立歌劇場が来日し、この「仮面舞踏会」を上演する予定で、この日に紹介された映像の公演との演出上の違いや来日する歌手の魅力なども解説してくださいました。

 この日の来場者はご年配の方が非常に多く、またオペラ入門者からヴェテランの方まで幅広くいらしたようで、オペラに対する興味を一層かき立てられたようです。オペラを見たくなる、とても興味深い講座でした。

(K.Y)

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