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音楽雑誌でお馴染の
岸 純信 オペラ講座(全3回)開催レポート
〜ヴェルディ生誕200年〜
2013年6月8日(土) 〜9月14日(土)
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
第1回 2013年6月8日(土)10:30〜12:00
ヴェルディの「親しみやすさと新しさ」〜《椿姫》を中心に
*オペラ化が難しいと思われた、時代を映す生々しいドラマ「水商売の女性の悲劇」を敢えて舞台に載せたヴェルディの意図とは?

 

 

 本日は、オペラ研究家としてご活躍中の岸純信先生にお越しいただき、ヴェルディの《椿姫》について解説していただきました。先生は『音楽の友』をはじめとするたくさんの音楽雑誌、またCDやDVDの解説等に登場していらっしゃいますので、クラシック音楽のお好きな方は、お名前をよくお見かけしているのではないでしょうか。

 今年はヴェルディ生誕200周年ということで、日本でもたくさんのホールがヴェルディのオペラを看板に掲げています。しかしながら、いくらメモリアルイヤーとは言え、今まで全くヴェルディのオペラに触れたことのない方にとって、いきなりホールに足を運ぶことは少し勇気の要ることかもしれません。岸先生は本日、ヴェルディの《椿姫》を中心に、これから《椿姫》を観る方へのガイドになるような話をされました。一方で、既にヴェルディのオペラを観たことがある方にとって興味深いエピソードも、たくさん登場いたしました。

 《椿姫》は高級娼婦ヴィオレッタが、アルフレードという青年と恋に落ちたことで真に人を愛することを知るものの、周囲にその愛を引き裂かれて命絶えてゆくまでを描いたもの。比較的わかりやすい筋立てと、覚えやすい歌の数々で、広く大衆に訴えかけられる作品となっています。とは言え、娼婦を主人公にするというのは、当時としてはあまり許されることではなく、そこにこの作品のセンセーショナルな一面があります。岸先生は《椿姫》のあらすじと見どころを、映像もまじえながら丁寧に解説されてゆきました。特に興味深かったのは、原作の小説とその戯曲化、そしてヴェルディによるオペラ化によって、《椿姫》の物語が少しずつ形を変えているというお話でした。小説と戯曲とオペラでは、物語の語り方やクライマックスの創り方が違います。そうなりますと、各場面で誰が登場して誰が登場しないのか、ということも変わります。そしてその場面に居合わせるか居合わせないかで、その人物のキャラクターも変わってきてしまいます。

 ところでもう1つ興味深いのは、ヴェルディという作曲家は私生活の変化が作曲の出来栄えにもかなり反映されてしまっているということ。この《椿姫》も最初の妻マルゲリータを失った悲しみの時期を越して、次の恋人ストレッポーニと愛を育んでいる最中に書かれています。次回の岸先生の講座は《アイーダ》ですが、こちらでもどのようなヴェルディパワーを聴くことが出来るのか…今から大変楽しみです。

(A. T.)

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