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三木 香代 & 森 知英 ピアノデュオの夕べ Vol.4 開催レポート
2020年12月4日(金) 18:30開演 17:50開場
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 3年ごとに開催されている三木香代さんと森知英さんのデュオ・リサイタル。貴族の家庭やサロンを思わせるような気品のある曲目から、構造的にも構想的にも交響楽に匹敵する規模を持つ本格的な演奏会レパートリーへと徐々に移っていくような、連弾・ピアノデュオというジャンルの奥深さを感じさせるプログラミングでした。

 まず演奏されたのはベートーヴェン《4手のためのソナタ》作品6。ベートーヴェンの数少ない連弾曲の一曲で、2楽章からなります。当時の貴族が家庭で演奏することを想定していたのか、均整の取れた可憐な楽曲に仕上がっています。テクスチャは2手のためのソナタよりも分厚いはずなのに、お二人の連弾はあくまで軽やか。普段しかめ面ばかりが連想されるベートーヴェンのイメージとは違う一面を聴かせていただきました。にこやかにピアノを囲む家族や仲間たちの情景が目に浮かぶようです。

 続いて演奏された布施威さんの7曲からなる曲集《森と生き物》は、どの曲もニュアンスに富んだそれぞれの表情を持っています。お二人の解説によると、曲集全体で春から冬までの四季の移り変わりを描いているということでしたが、息の合った連弾により、それぞれの季節の情緒を十全に感じることができました。

 続いて演奏されたのはシューベルトの《ロンド》イ長調 D951、《アレグロ》イ長調 D947。この2曲は同時期に作曲されたものですが、それぞれシューベルトの別の側面を備えています。お二人の演奏からは、《ロンド》では穏やかな主題による歌心、《アレグロ》からは華々しく規模感のある主題と彼ならではの独創的な転調が、それぞれ楽曲の特色として引き出されていたように思われます。また、作曲者の最晩年の作品なだけあって、同じく後期のピアノソナタや交響曲に聴かれる深遠さを備えているように感じました。

 休憩を挟んで編成は連弾から2台ピアノへ。まず演奏されたのはブラームスのワルツ集(作曲者による2台ピアノ編曲版)でした。原曲の連弾曲は耳にする機会がよくありますが、2台ピアノだとどうなるのだろうと聴いていると、ところどころで中音域や内声が補強されており、連弾にはない独特のテクスチャの厚さや複雑さが楽しめました。特に激しいロマ音楽風のワルツは、お二人の旋律と伴奏の掛け合いや、細かい音型によるダイナミックなアンサンブルが印象に残りました。

 プログラム最後のブラームス《ハイドンの主題による》は管弦楽版でも知られる大曲です。これまでの楽曲の雰囲気ともまた違う、本格的な演奏会向けの難曲だと言えるでしょう。優雅で厳かな主題から力感あふれる変奏、また悲しげな変奏へと移り変わるごとでの表情付けの変化は言うまでもなく、反復記号の前後でがらりと表現を変える解釈には引き込まれました。最終変奏のパッサカリアは管弦楽もかくやと思わせるばかりの迫力と華やかさがありました。

 盛大な拍手に迎えられ、「少しでも楽しい気持ちでお帰りいただけるよう」とアンコールでお二人が演奏されたのは、優雅で心休まるような布施威《ロマンチックなワルツ》と、きらびやかで楽しげなプーランク《シテール島の船出》。ワルツの軽やかで親密な雰囲気に包まれて、演奏会は幕を閉じました。

 小曲集から大曲まで、様々な曲想の楽曲が並ぶプログラムでしたが、全体的に細やかな拍節感、テンポの揺れ、微妙な楽曲の表情の変化など、随所で息の合ったお二人の奏でる音が非常に印象的でした。かなり気が早いですが、次回のVol. 5が今から楽しみです。

(A.Y)

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