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デュオ・カイザーバウム 3rd.Concert 開催レポート
《ベートーヴェン チェロ・ソナタ全曲演奏シリーズVol.3(全5回)》
出演/宮下朋樹(ピアノ) 海野幹雄(チェロ)
《東京 公演 》 2019年6月21日(金) 開演19:00 (開場18:30)
会 場/
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」 (渋谷区神宮前5-1)

 

 ピアニストの宮下朋樹さんとチェリストの海野幹雄さんによるアンサンブル・ユニット、「デュオ・カイザーバウム」の5回にわたる演奏会シリーズの第3回。全部で5曲あるベートーヴェンのチェロ・ソナタを、プログラムの中に毎回1曲ずつ組み込むのがテーマとなっているのですが、今宵演奏された第3番は、ベートーヴェンのチェロ・ソナタの中でも名曲中の名曲。2人の力強いアンサンブルが冴え渡りました。

 「デュオ・カイザーバウム」の「カイザーバウム(Kaiserbaum)」とは、ドイツ語で「桐の木」のことで、2人が桐朋学園大学の先輩・後輩であることに由来しているといいます。そして、それぞれのお名前「朋樹」の「樹」、「幹雄」の「幹」も木に因んでいる。これもポイント。そして、当日配布されたプログラム・ノートには、「……太い幹を持つ樹が豊かな実りをもたらすよう結成されたデュオ……」とのメッセージがありました。

 演奏の合間には、宮下さんが演奏曲目について楽しい解説を展開し、海野さんはプラス・アルファのお話を挟み込む。心地良いやり取りでしたが、内容が実に深く、研究しているなあ!とすっかり感心しました。

 プログラムの冒頭は、メインテーマである、ベートーヴェンの「チェロ・ソナタ 第3番 イ長調 作品69」。誇り高く生命力に満ちた第1楽章、畳み掛けるような進行が斬新な第2楽章、アダージョからアレグロへの展開が鮮やかな第3楽章と、ワクワクしながら聴きました。特に第3楽章のチェロとピアノの掛け合いが、何でも話せる親友同士の対話のよう。ベートーヴェンが交響曲『運命』や『田園』と同時期に書いた充実期の作品とのことで、さすがに素晴らしいものでした。

 続いて、シューマンの「5つの民謡風小品 作品102」。舞曲調でエキゾチックなメロディー、さらにはチェロとピアノとが融合しながら美しい歌を歌い上げたり、情熱的な展開をみせたりと、さまざまな要素が現れていきます。面白かったのは、宮下さんと海野さんが解説した、シューマンが第1曲の冒頭に書き遺したというある難解な言葉の謎解き。シューマンは旧約聖書から、「空の空(くうのくう)」というラテン語(Vanitas vanitatum)を引用したそうですが、虚しさ、富と名声は黄泉の国にもっていくことはできない、といった意味があるそうです。なぜシューマンはそんな言葉を引用したのか。深い意味、皮肉な要素が含まれているのではないかと、想像力が掻き立てられるわけですね。

 なお、この作品はシューマンのたった1曲しかないチェロとピアノのための作品で、それだけに貴重なレパートリーなのだそうです。海野さんは、シューマンの妻クララが破棄してしまったといわれている、シューマンのもう1曲の幻のチェロ作品がどこかの図書館とかで突然見つからないかしらと、本当に惜しそうに話されていました。

 休憩を挟んで、プログラムの後半は、ブラームスの「チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 作品99」。チェロの渋い魅力が遺憾なく発揮されるソナタ。ピアノの重厚な響きと呼応して、なんてセンチメンタル、スケールの大きさでしょう! アンコールはメンデルスゾーンの「無言歌 ニ長調 作品109」とブラームスの「ひばりの歌 作品70-2」で、ロマンティックに。 デュオ・カイザーバウムのこの演奏会シリーズの次回・第4回は、2020年6月中旬を予定しています。乞うご期待です。

(H.A.)

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