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田中あかね ピアノリサイタル 開催レポート
“ボンの町から” Vol. 12 〜ベートーヴェン最後の3つのピアノソナタ〜
2019年5月24日(金)19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 「ボンの町から」と題したリサイタル・シリーズを2009年からカワイ表参道で行っているピアニストの田中あかねさんによる、同シリーズの12回目のリサイタルが行われました。

 田中さんは東京藝術大学を卒業、同大学院修士課程を修了後、ミュンヘン国立音楽大学マイスターコースを修了。更にザルツブルク・モーツァルテウム音楽院でも研鑽を積んでいます。19年間にわたってドイツに滞在し、ドイツでの演奏も活発に行い、2010年からは毎年ミュンヘンをはじめ、ドイツ各地を演奏旅行しています。国内ではリサイタルの他、レクチャー・コンサートを行ったり、世界的な演奏家との共演なども数多く行ったりしています。朝日カルチャーセンターでもベートーヴェンのソナタをテーマにしたレクチャー・コンサートを行っていますが、ベートーヴェンのソナタを中心に据えたこのリサイタル・シリーズも、毎回好評を呼んでいます。

 今回のプログラムは、ベートーヴェンの最後の3つのソナタ、第30番 Op.109、第31番 Op.110、第32番 Op.111です。

 田中さんは最後のトークで、「このプログラムは自然の流れで決めました。朝日カルチャーでも1曲ずつ取り上げていますが、3曲を一度に弾いたのは初めて」と語っていました。

 演奏は番号順に、最初に「第30番 ホ長調 Op.109」からです。第1楽章と第2楽章はいずれも素直なソナタ形式ではなく、第1楽章はロンドのような雰囲気もあり、テンポもよく変わる曲で、最後は複縦線で第2楽章に入っていきます。ベートーヴェンの後期の作品には必ずと言っていい程フーガあるいは変奏曲が用いられていますが、この第3楽章は正にその変奏曲です。主題に始まり、変奏が順繰りに巡っていって、最後にまた主題に戻ってきて終わるという、時の流れを感じさせるようなソナタです。田中さんはこのソナタを、生き生きと流れよく歌って、最後は静かに音楽を収めました。

 次は「第31番 変イ長調 Op.110」。第1楽章はソナタ形式で、第3楽章はフーガです。この曲でも田中さんはきっちりと端正にまとめ上げました。特にアダージョで始まる第3楽章では、序奏部でレシタティーヴォに続いて登場する有名な「嘆きの歌」はロマンティックに過ぎず、間の取り方も素晴らしく、切々と訴えかけてきました。主部の3声のフーガも上手く処理していて、ベートーヴェンらしさがよく出ていました。

 最後は「第32番 ハ短調 Op.111」。ベートーヴェンの最後のソナタを、田中さんは第1楽章を堂々とした音で始め、その後も堂々と展開しました。静かな細かい所も丁寧に音を紡いでいきました。古典派から既に脱却したロマン派を思わせる第2楽章では、テーマを次第に面白く展開させて、聴衆を引き込んでいきました。

 「去年ドイツでベートーヴェンの有名な曲を集めて弾きましたが、ベートーヴェンは自分たちの音楽だ、という国の人たちに受け入れられました。それが自信になりました。」と語りましたが、その言葉どおり、3曲とも見事な演奏を披露しました。

 田中さんのベートーヴェン作品の演奏をもっと聴いてみたいと思わせてくれたリサイタルでした。

(K.Y.)

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