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吉岡 由衣 ピアノリサイタル 開催レポート
2018年
10月25日(木) 開演19:00 開場18:30
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 本日は16歳にして留学生活を開始し、ヨーロッパ各地で活動されている若手ピアニストの吉岡由衣さんによる、リサイタルが開催されました。プログラムに選ばれている曲は、いずれも吉岡さんの師匠達との思い出の楽曲であるということで、各曲のあいだで吉岡さんがその思い出エピソードを披露しながらの公演となりました。

 吉岡さんの演奏は勢いのある音運びと明快な音色、そしてそれらを実現する高い技術が特徴的です。最初は変奏曲形式になっているシューベルトの《変奏曲》作品142の3番でしたが、細やかな音も滑らかに紡いでいらっしゃいました。続いて演奏されたのはショパンの《スケルッツォ》第4番。ショパンの音楽の特徴としてよく謳われる哀愁に加え、ユーモアも必要とするこの楽曲は、ショパンの他の3つの《スケルッツォ》に比べて日本で演奏される機会が少ないのですが、吉岡さんは持ち前の勢いのある音色で、粋に演奏されていました。

そして前半を締めくくったのは、リストの対照的な名曲である《コンソレーション》第3番と《メフィスト・ワルツ》第1番。ご自分の亡き師匠に薦められて以来、その真意を考え続けて来たという吉岡さん。《コンソレーション》の美しい旋律からは、リストに対する熱意が、また《メフィスト・ワルツ》の技巧的なパッセージの1つずつからは、長らくこの作曲家と向き合って来たがゆえの高い技術が窺えました。

 後半は一転して、日本でも人気の高い近代のロシア人作曲家ラフマニノフを中心としたプログラムでした。数々のラフマニノフの美しい作品の中で、吉岡さんが選んだのは、ピアノという楽器で表現しうる様々な表情を体現し、ロシアものらしい寒々しい哀愁も漂わせた《楽興の時》第1番〜第4番でした。吉岡さんは幅広い音色でこの楽曲の魅力を引き出していましたが、中でも立体感のある音作りが求められる第2番と、スリリングな第4番は素晴らしかったです。そして最後に演奏されたのは、やはりラフマニノフの名を後世に残す契機となった編曲もののなかから、ラフマニノフ=クライスラー《愛の悲しみ》でした。吉岡さんはタイトルの通りの「悲しみ」の表情と、楽曲のベースにある舞曲のリズム感の双方を見事に表現されていました。

 アンコールは「愛の悲しみ」で終わった本編と対照的に、リストの《愛の夢》が選ばれました。最後までお客さんへの気配りが行き届いた吉岡さんによる、とても充実したコンサートでした。

(A.T.)

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