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リスト音楽院の仲間たち 開催レポート
〜ハンガリーに魅せられた六人のピアニスト〜
2015年6月13日(土) 19:00開演 18:30開場
会場:
トッパンホール (東京都文京区水道1-3-3 TEL.03-5840-2200)

 

 

 

 本日はトッパンホールにて、リスト音楽院で研鑽を積まれた6名のピアニストによる、ジョイント・コンサートが開かれました。「リスト音楽院の仲間たち――ハンガリーに魅せられた六人のピアニスト」というタイトルに準じて、演目はリストの名曲を中心に、ハンガリーとの関わりが深い作曲家達の作品が選ばれました。トッパンホールはその音響のよさが謳(うた)い文句ともなっている会場ですが、今回はこの響き豊かな会場にカワイのフルコンサートグランドが入り、ピアノのコンサートとしては大変贅沢な環境となっていました。また6名のピアニストが順々に演奏されるということで、弾く方によってピアノの鳴り方が様々に変化するのも、お客様の一つの醍醐味になったのではないかと思います。

 最初にご登場されたのは、金子恵さん。エステルハージ家(ハンガリーの貴族)と交流のあったシューベルト、ハンガリー出身のリスト、ハンガリー民謡の採集に努めたバルトークという、世代の違う3人の作曲家達の作品を採り上げていらっしゃいました。金子さんの演奏は、深みのある低音と立体的な音楽創りで、とても説得力のあるものでした。特にリストの技巧的な作品である「ラコッツィ行進曲」(《ハンガリー狂詩曲》第15番)では、ベース音の効いた力強い演奏で、客席を惹きこんでいらっしゃいました。

 次に演奏された揚原祥子さんは、対照的に伸びやかな高音が魅力的でした。演目はリストの《巡礼の年》(第2年)から〈婚礼〉〈ペトラルカのソネット第104番〉。リストの作品の中でも比較的静かで繊細さの求められる楽曲ですが、揚原さんは高音の美しさを活かした旋律線で、とても表情豊かにまとめていらっしゃいました。

 前半の最後に登場された高田匡隆さんは、リストの《死の舞踏》を演奏され、曲頭から圧倒的な迫力で客席の空気を変えていらっしゃいました。高田さんの演奏の素晴らしさは、音の量質ともにたくさんの引き出しを持っていらっしゃることでした。《死の舞踏》は悪魔的な激しさと天使的な静寂が対比を成している楽曲ですが、そのどちらも高田さんは見事に表現していらっしゃいました。

 後半の最初に登場されたのは、志茂征彦さん。リートの伴奏を中心に活動していらっしゃる志茂さんは、ソプラノの内藤稚子さんとのコンビでのご出演でした。志茂さんは音の響きへの感覚が大変鋭敏な演奏で、まず20世紀の代表的なハンガリーの作曲家リゲティの歌曲で、これまでとは一変した音響空間を創っていらっしゃいました。そうしてピアノの音と声の世界に客席を巻き込んだ上で、現在「愛の夢」のタイトルで知られている《おお、愛しうる限り愛せよ》と《三人のジプシー》というリストの歌曲2つを演奏されました。内藤さんの明快なドイツ語と志茂さんオリジナルの翻訳で、より楽曲の世界観がわかりやすくなっていました。

 次に演奏されたのはこの演奏会の企画に早くから参加されていました津島啓一さん。リストの《巡礼の年》(第1年)から〈オーベルマンの谷〉を情緒豊かに演奏されていました。セナンクールの小説にインスピレーションを得ているこの楽曲は、1つの楽曲の中にも様々な表情がありますが、津島さんの表現豊かな演奏で主人公の心模様を色々と想像しながら聴くことが出来ました。

 最後はこの企画の立ち上げ役でもある干野宜大さん。シューベルトの歌曲をリストが編曲した〈若者と小川〉(連作歌曲《美しき水車小屋の娘》より)で演奏を始められました。干野さんの演奏は、ピアノから奏でられる音一つ一つに生命感があり、単音の旋律だけでも聴く人を惹きつけられる力がありました。次に演奏された即興曲作品90-3では、その音の生命感が最も感じられ、言葉で言い尽くせない美しさでした。最後に演奏されたのは、リストの《ハンガリー狂詩曲》第13番と干野さんご自身の編曲がコラボした〈マジャールの歌〉。リストのピアニズムと干野さんのピアニズムが化学反応を起こした圧巻の演奏で、客席は大きな拍手に包まれました。今回の企画は第2回以降も検討中だとのこと。ぜひ2回目が実現し、今日ご参加されたピアニストの皆様の演奏がまた聴ける日を楽しみにしております。

(A. T.)

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