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ピアノミュージック・タイムトラベル to 1913(全2夜)

東京藝大若手教員陣による近代ピアノ音楽の祭典

2013年10月29日(火18:15開場 18:30プレトーク 19:00開演 

第二夜 フランスの夕べ 開催レポート

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

演奏/東京藝術大学ピアノ科教員
・ 有吉亮治・ 草 冬香・ 菅野雅紀・ 後藤友香理・ 冨士素子
レクチャー講師/吉田玲子(音楽学者)

吉田玲子

有吉亮治

菅野雅紀

後藤友香理

草 冬香

冨士素子

 1913年5月29日、パリ。100年前のパリのシャンゼリゼ劇場では、音楽史上有名で最もスキャンダラスと言われる「事件」の一つ、ストラヴィンスキーの『春の祭典』の初演が行われました。パリの音楽の「顔」が一堂に会していたその日。果して彼らは『春の祭典』をどのように聴き、音楽の新思潮に対してそれぞれどのような反応を示していたのでしょうか。

 この「1913年」にフォーカスし、彼らの作品を通して音楽の時間旅行へと誘う<ピアノミュージック・タイムトラベル to 1913〜東京芸大若手教員陣による近代ピアノ音楽の祭典>第二夜「フランスの夕べ」。開演前には音楽学の吉田玲子さんによるプレトークも行われ、パウゼのスクリーンに照らし出された美しい写真と共に一挙に「100年前のパリ、シャンゼリゼ劇場」へと誘われます。

 サティの小品「操り人形は踊っている」が今夜のユーモラスな導入を奏でた後演奏されたのは、フォーレの即興曲第6番Op.86 bis 。オルガンを思わせる重厚な和声から(原曲のパープを連想させる)風光明媚なアルペジオが煌びやかに飛び出す名曲です。有吉亮治さんの演奏は響きの華麗さもさることながら懐深い優しさを感じさせるフォーレの人間的な温もりが見える印象的なものでした。

 それに続くラヴェル、フローラン・シュミット、ケックランはいずれもフォーレ門下の大作曲家。彼らの音楽は師のフォーレの音楽的な高みを仰ぎつつ、時代の新思潮に対してそれぞれ独自の反応を覗かせます。ラヴェルの「ボロディン風に」「シャブリエ風に」「前奏曲」では極度の洗練と共に「過去」に対して注がれるダンディスムが、シュミットの影Op.64より<1.遠くから聴こえる>では印象派の影響を受けつつも後期ロマン主義的な憧憬が色濃い独特の懐古趣味が菅野雅紀さんの華麗なピアニズムによって再現されました。後藤友香理さんによるケックランのエスキスOp.41第一巻(抜粋)では、オーソドックスで素朴なフレーズがかえって歴史の束縛から解放された自由さを演出します。

 後藤さんの優しく寄り添うようなタッチによって続いて演奏されたのはサティの小品集「太った木の人形のスケッチとからかい」。どんな「党派」にも属さない歴史の波にぽっかりと穴を明けたような滑稽で静謐な音楽を聴くことができました。そして、前半の締めくくりはパリの大御所サンサーンスの「愉快なワルツ」Op.139。敢えて新時代と距離を置き、伝統の墨守のなかで繰り広げられる詩的なワルツに親しみました。

 後半はドビュッシーの前奏曲第2巻。第一曲から第六曲までの草冬香さんの演奏においては、非常に立体的でイマジネーション豊かな音楽が聴かれると共に、場面の切り替えに対する鋭敏な感覚やタッチの繊細さ、そして即物的でない旋律の奥ゆかしい女性的な奏で方にも心を奪われました。第七曲から第十二曲においては冨士素子さんの端正で格調高い表現を堪能することができました。とりわけ「水の精」や「カノープ」での滋味深い趣や「花火」における華麗な音絵巻が素晴らしかったです。

 100年前のパリと「今」が響き合う大変貴重なコンサート。音楽との新しい出逢いの体験に会場のお客様も大満足のご様子でした。

(G.T.)

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