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カワイ音楽振興会 創立50周年記念コンサート Vol.2 開催レポート

2013年10月22日(火)イブニング・コンサート 19:00開演 18:30開場 
出演: 津嶋 啓一、松本 和将
会 場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ

 

 

 

 

 〈カワイ音楽振興会創立50周年記念コンサートVol.2〉第1日目のイブニング・コンサートは気鋭のピアニスト、津嶋啓一さんと松本和将さんの登場です。

 前半の津嶋啓一さんの1曲目は、ベートーヴェンのソナタ「告別」。詩情豊かな第1楽章、沈鬱な中にもロマンティックな背景を感じる第2楽章。そして第3楽章では、ルドルフ大公との再会の喜びに浮き立つ心が、明るく爽やかに表現されました。

 続いて、ショパンの「幻想曲」。ドラマティックな展開を見せる中でも、穏やかな心境を感じるのは、津嶋さんの個性なのでしょうか。

 締めはリストです。まず「エステ荘の噴水」は、迸り出た噴水の清らかな水が、陽光を受けて踊り輝き、水面へと落ちて弾ける……そんな表情を見せる水の様々な映像が浮かび上がるような、鮮やかな演奏でした。続く「愛の夢・第3番」では、甘いメロディーが華麗な盛り上がりを見せます。最後の「ラ・カンパネラ」で燃えるようなクライマックスに達し、会場は大きな拍手に包まれました。

 アンコールではシューマンの「トロイメライ」を、温かな音色で慈しみを込めて歌い上げました。ピアノのスタンダードな名曲の魅力は、何度聴いても色褪せることなく素晴らしいものです。

 後半の松本和将さんの練りに練られたプログラムは、バッハの平均律とその他の楽曲とが、交互に現れるというものでした。曲と曲との合間はあるのですが、音楽としてはごく自然に繋がっていて、緊張感がずっと続き、会場は誰一人拍手をすることなく、前のめりになって音楽に聴き入っていました。

 まず平均律1巻の8番で、恐いほど美しく自由なバッハが空間に解き放たれました。

 そしてブラームスの「3つの間奏曲Op.117」へ。バッハのフーガの余韻と、間奏曲の1曲目のテーマとが、見事に融和したのに驚きました。2曲目で悲しみが溢れ出て、3曲目で焦燥感の中を突き進むのですが、すべてが制御された演奏に脱帽です。

 やるせない悲しみの中に終わったブラームスに、救いのシャワーを注いだのが次のバッハ、快活で軽やかな平均律1巻の3番でした。

 ごく自然に、ラフマニノフ=コチシュの「ヴォカリーズ」のセンチメンタルな調べへ。熱い思いが高まり、音楽はここで一つの大きな山場を迎えます。

 そしてまたごく自然にバッハへと回帰。平均律1巻の5番、21番と流れるような展開を見せ、常に前へとアグレッシヴに進んでいきます。今を生きる、鮮やかなバッハです。

 最終曲、ショスタコーヴィッチの「24のプレリュードとフーガOp.87」より第24番。大教会のパイプオルガンのような荘厳な始まりから、親しみやすいテーマによるフーガへ。まばゆい展開をみせ、音楽はついに頂点へ。巨大な山がそびえ立ち、テーマの音が高らかに鳴り響き、ついに終焉を迎えました。

 わずかな静寂を経て、固唾を呑んで聴いていた会場からは大きな拍手が。こんな音楽があるのか!と、いつまでも興奮冷めやらぬ感じでした。

 演奏を終えた松本さんから一言。「僕なりに一つの物語を構築しました。孤独と悲しみと希望。そして最後のショスタコーヴィッチですべてを受け止めて終わらせるというような……」。

 このプログラム全部で一つの物語だったと聞いて納得。演奏を聴いてそれが十分過ぎるほど伝わってきました。

 ピアノ音楽の全く新しい世界観を感じる、見事なコンサートでした。

(H.A.)

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