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カワイ音楽振興会 創立50周年記念コンサート Vol.1 開催レポート

2013年4月23日(火)〜25日(木)
会 場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ
4月25日(木)
第9回 20:00開演 19:45開場 出演: 浜野 与志男

   

 4月23日より開催されている「カワイ音楽振興会創立50周年記念コンサートVol.1」も本日で最終日を迎えました。最終回の第9回を演奏されるのは2011年の全日本音楽コンクールで第一位を獲得され、現在は英国王立音楽大学修士課程で更なる研鑽を積まれながら活躍されている新進気鋭のピアニスト浜野与志男さんです。会場には若いお客様をはじめとして幅広い年齢層の方々が多くみられ開演前から熱気が溢れていました。

 さて、浜野さんが最初に演奏されたのはバッハの2つの主題による幻想曲ト短調BWV917と幻想曲とフーガイ短調BWV904です。とりわけ前者はピアノリサイタルではなかなか聴くことのできない珍しい作品ですが、まず筆者が驚いたのは浜野さんが極めてピアノの音量を絞りつつ個々のラインを繊細に描き出しながらバッハのポリフォニーの世界を全く独自の手法で表現されていたことです。特に、フーガのテーマの最初の出だしは聴こえるか聴こえないかの極限のところまで微細に表現されていたため、聴き手の緊張感が自ずと引き出されるとともに音楽の背景にある沈黙が浮き彫りにされていました。

 さらに続いてラフマニノフの絵画的練習曲作品33においても浜野さんは技巧的な華やかさよりも作品の奥底に宿るほの暗いメランコリーや音色の豊かさや多彩さを重視されていました。

 そして、プログラムの締めくくりには山田耕筰の『スクリアビンに捧ぐる曲』(1.夜の詩曲・2.忘れ難きモスコーの夜)とスクリャービンの詩曲『焔に向かって』が演奏されました。日本とロシア双方にルーツをお持ちである浜野さんならではの選曲であり、筆者も興味深く拝聴させて頂きました。両者とも20世紀前半の神秘主義的な時代思潮を彷彿とさせるような独特の色彩感と恍惚感が滋味深い名作でしたが、前者が日本的な抒情性を豊かに讃えているのに対し後者はまさに表題のごとく火のような情熱が漲っていました。

 アンコールは山田耕筰の春夢。日本人であれば誰もが持っている自然に対する愛しみの心やはかない慕情、庶民的な生活感情が浜野さんのピアノによって映し出されつつ、作曲当時(1934年)山田耕筰が国際的な水準で見ても最先端の音楽を書いていたことに驚かされました。3日間のメモリアルコンサートのフィナーレを飾るに相応しい充実したプログラムを堪能させて頂きました。

(G.T.)

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