トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > 上原由記音 公開講座 > 開催レポート

上原由記音 公開講座
スペイン ピアノ作品 レクチャーコンサート 開催レポート
作曲家 フェデリコ・モンポウの魅力(全2回)
2013年
9月11日(水) 10:30〜12:30
第2回 〜 「歌と踊り」(全14曲)について 〜
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

  本日は、スペイン音楽の魅力に惹かれてから30年という、ベテランのピアニスト上原由記音先生が、20世紀を生きたスペインの作曲家フェデリコ・モンポウ(1893‐1987)について、レクチャーをされました。上原先生自身のモンポウ作曲《歌と踊り》全曲演奏付で、大変贅沢なプログラムとなっていました。

 スペインという響きを聴きますと、多くの方が真っ先に浮かべるのが、ヨーロッパの中でも比較的南方の太陽が降り注ぐ街並みや、エキゾチックな雰囲気なのではないでしょうか。しかしながらモンポウの育った土地というのはカタルーニャ地方といって比較的スペインの中でも北方にあり、むしろ土地の空気は隣国フランスに近かったといいます。おそらく音楽も、フランス音楽のお洒落で繊細なイメージをかなり共有していたと言えるでしょう。モンポウは、自分がナショナリスティック(愛国主義的)と呼ばれることを嫌がったそうですが、その理由もこうした一般的なスペインへのイメージと、彼の採り入れたあるいは彼自身の音楽内容とのズレがあったからなのかもしれません。

 実際にモンポウの《歌と踊り》を聴いてみると、私達が思っているよりもずっと、旋律が聴き取りやすく、日本人の耳に親しみを覚えるようなものであることがわかります。そして驚くべきは、モンポウがいかにたくさんの音楽の引き出しを持っていたかということです。例えば、第1曲は教会音楽を思わせるような音階が現れ、第6曲では中南米の音楽のリズムが登場します。そして母方の家が鐘鋳造の名門であったことが影響して、第4曲や第14曲では鐘の音を模した音楽が書かれています。さらに大方の楽曲は題名の通り「歌」部分と「踊り」部分から成っているのですが、特に第8曲の「歌」部分でのヘ短調と「踊り」部分でのヘ長調との対比は大変興味深いものでした。第5曲・第6曲はいずれも原材料となるような音楽を採取した跡のないオリジナル曲ですが、そこではさらにモンポウの豊かな発想が見られるようでした。上原先生はそんな《歌と踊り》の1曲1曲の特徴を丁寧に説明しながら、丹念に演奏していらっしゃいました。

 なかなか日本では演奏される機会の少ないモンポウですが、本日は2時間じっくりと彼の音楽を楽しむことが出来ました。スペイン生まれの音楽の新たな一面を知ることのできた、大変有意義な時間でした。

(A.T.)

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > 上原由記音 公開講座 > 開催レポート