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今峰由香 公開講座 開催レポート
〜「ヨーロッパのレッスン風景 第2弾」〜
2013年
4月5日(金) 10:30開講 10:00開場
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 本日は、ミュンヘンで教鞭を取られている今峰由香先生による公開講座が開催されました。モーツァルトのピアノソナタKV 330とハイドンのピアノソナタ ハ長調 Hob.XVI:50。こうした古典的なレパートリーを弾きこなすことは、ただコンクール等でよい結果を残すためだけでなく、ピアノの基礎的な技術・表現を向上させるために大切です。

 先生はまず、古典主義時代の作品を演奏する上で把握しておいたほうがよい時代背景・思想についてお話しされました。古典主義時代のレパートリーと言いますと、現代では非常に堅苦しい、シリアスなイメージが先行してしまいます。しかしながら、その頃は芸術において「疾風怒濤 (独Strum und Drung)」という思想が流行り、むしろ音楽とは人々の感情を表現し、しかもわかりやすく伝えているものでなければなりませんでした。ただ、その「感情表現」を行うためには、アーティキュレーションに対する細やかな気配りと、豊かな想像力が必要となります。

 まずモーツァルトのソナタを土台に、先生はアーティキュレーションを中心としたレクチャーをされました。ピアノの楽譜にも頻繁に見られるスラーは元々弦楽器の弓使いを示すことから派生したものです。よって弦楽器の演奏を想像すると、長いスラーの最後には自然なデクレッシェンドがかかることになります。ただし、スラーがアウフタクトとして次の小節に向かっている場合は、その音に向かってややクレッシェンドをかけてゆく方が、拍子感を出すことが出来ます。メロディーラインが前の音から次の音へと移るのをわざと遅らせることで、一瞬伴奏と不協和な状態を作る掛留音では、次の協和状態に戻る音まで、手首に余分な動きをつけず一息に弾くことで、より和声感が出ます。こうして楽譜の隅々まで丁寧に読み解いた後には、もう一段階表現力をつける必要があります。そこで先生は、今度は音楽の「言葉」についてレクチャーされました。モーツァルトの音楽はオペラなどの劇音楽でなくとも、しばしば複数の人間の対話になっており、問いかけや応答をイメージしながら弾くと、より表現豊かになります。こうした細かい強弱や表現は、決して大げさなものではなく、非常に繊細なものでありますが、それを意識するかしないかで演奏が大きく変わるということが、先生の演奏からは読み取れました。

 ハイドンのソナタでは、モーツァルトのソナタでレクチャーしたことをふまえた上で、さらに豊かな表現を目指すレクチャーが行われました。今回選ばれたハイドンのソナタは、既にモーツァルトは亡くなった時代に書かれた、ハイドンの中でもかなり後期の作品。ピアノという楽器自体もハイドンが生きている間にどんどん進化して今のピアノに近いものになっています。よって、当然ハイドンの作曲も初期のものとは違い、より多様なペダリングや、オーケストラをイメージした各メロディーへのキャラクター付が必要になってきます。最後に先生は「ユーモア」についてお話されました。「ユーモア」というのは、なかなか日本人には馴染みのない概念ですが、ハイドンやベートーヴェンは、曲の展開に意外性をもたせたり、不思議な箇所にアクセントをつけたりと、曲にユーモアを含ませることを頻繁に行っていて、それを私達は理解して表現する必要があります。

 今峰先生のレクチャーはたったの2時間とは思えないほど内容の濃いもので、充実した時間はあっという間に過ぎてしまいました。先生は普段ヨーロッパで教鞭を取っていらっしゃるとのことですが、またぜひ日本でもレッスンしていただきたいと願います。

(A. T. )

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