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南雲竜太郎 新ピアノレパートリー講座 開催レポート
心に響く演奏のために・・・古典派・ロマン派への導入
〈演奏と解説・全3回シリーズ〉
第3回 2013年2月15日(金10:30〜12:30
ショパンのワルツとノクターン
講師:南雲竜太郎
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 素晴らしい演奏と明快な解説で好評を博している南雲竜太郎先生の新ピアノレパートリー講座、最終回は、ピアノ学習者の誰もが憧れるショパンの音楽についてです。今回はノクターン変ホ長調 Op.9-2、ヘ短調 Op.55-1、ハ短調 遺作と、ワルツ変イ長調 Op.69-1、 ロ短調 Op.69-2、嬰ハ短調Op.64-2、ホ短調 遺作をテーマに、ショパンの音楽を表現する際の大切なポイントを解説して下さいました。

 今日、ショパンは「ピアノの詩人」として親しまれていますが、この「ピアノの詩人」という例えは、音によって詩を語るような演奏から、ショパンの生前にも評論などで用いられていたとのことです。なぜなら、交響曲、室内楽、オペラなどの幅広いジャンルを手掛けていた当時の作曲家たちとは異なり、ショパンはピアノ曲をメインに作曲していました。それも、技術の向上や名技性、聴衆への演奏効果を狙ったようなものではなく、ショパンは、心の陰影を表すように、音によって歌いあげる奏法を築きました。この特徴は、ノクターンに非常によく表れているとのことです。

 ノクターンは、アイルランドの作曲家ジョン・フィールドが創始した様式です。ショパンは、この様式を独自に発展させました。弾いている音を押さえたまま次の音を弾くフィンガーペダルなど、ピアノの音をどうすれば歌のように滑らかにつなげられるかとういうことを追及し、演奏の改革もしたとのことです。

 ここで、先生はショパンが敬愛し創作の根底にあったバッハの作品とショパンの他の小品から、ノクターンに用いられている奏法をご紹介してくださいました。バッハの作品からは、フィンガーペダルの例として、≪小前奏曲≫(BWV941、BWV936)、シンプルな音のつながりを意識して弾く例として、≪インヴェンション第2番≫を、ショパンの他の小品からは、和声が旋律を構成するように弾く例として≪カンタービレ≫(Op.9-2に類似)、旋律を歌わせながら、左手のバスと和声を対等に扱う例として≪アルバムの一葉≫(Op.55-1に類似)、左手の移行が旋律に寄り添うように音楽の流れを滑らかに繋ぐ例として≪コントルダンス≫を提示してくださいました。

 続いて、ノクターンに移ります。以上の例に加え、全体を通して以下の事柄をアドバイスしてくださいました。

(1)同じ旋律が繰り返し登場するときは、毎回、新鮮な気持ちで弾くこと。

(2)装飾的なパッセージなどは、即興性が感じられるように滑らかに弾くこと。

(3) 譜面に斜体で記されている運指番号はショパン自身によるもので、例えば、555や5455などといった指使いであっても、それぞれの指がもつ音のニュアンスを活かすこと。

(4)スタッカートであっても音が滑らかにつながっているようにペダルを用いること。

 以上のことを踏まえた上で実演を聴くと、音楽がまるで詩を語っているかのように滑らかに展開されていることがわかり、ショパンの行った試みの凄さを感じられました。

 後半は、ワルツについてです。今回は、成立時期に沿って解説してくださいました。ショパンのワルツには、サロンで踊るような実用的なワルツと、踊ることを目的とせず、ノクターンや前奏曲のように心の陰影が表現されたワルツの2つのタイプに分類することができます。前者は、ウィーンで活躍していた時期に作曲された≪ワルツホ短調 遺作≫が当てはまります。躍動感のあるテンポで、3拍目から1拍目へ行くエネルギーを感じること、伴奏の2拍目を大切にすることなどをお教えくださいました。後者は、作曲当時の恋人マリア・ヴォジンスカへ、別れ際に贈った≪ワルツOp.69-1≫と、初恋の相手コンスタンツェへの憧れが表れている≪ワルツOp.69-2≫、晩年に作曲されたワルツ≪Op.64-1≫が当てはまります。しっかりとした3拍子ではなく、自由で移ろいやすいテンポでもって、和声の陰影が感じられるように演奏することがポイントとなります。

 一見シンプルに感じられるノクターンとワルツですが、ショパンの重要なエッセンスが凝縮されており、魅力的であると同時に非常に多くの課題が求められる難曲だと感じました。先生の楽譜の意図をしっかりと表現された演奏と説得力のある解説で作品の魅力を改めて実感いたしました。南雲先生の全3回にわたって開催された『心に響く演奏のために・・・古典派・ロマン派への導入』シリーズ。この時代の作品を学ぶ上で、大きな助けとなった非常に有意義な講座でした。

(K.S)

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