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南雲竜太郎 新ピアノレパートリー講座 開催レポート
心に響く演奏のために・・・古典派・ロマン派への導入
〈演奏と解説・全3回シリーズ〉
第2回 2013年1月16日(水10:30〜12:30  
シューベルトの即興曲と楽興の時
講師:南雲竜太郎
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 南雲竜太郎先生の実演を交えた新ピアノレパートリー講座『心に響く演奏のために・・・古典派・ロマン派への導入』第2回は、シューベルトの即興曲と楽興の時ついてです。今回取り上げられた曲目は、即興曲 変ホ長調Op.90-2、変イ長調Op.90-4、変イ長調Op.142-2、楽興の時 ハ長調Op.94-1、ヘ短調Op94-3です。これら5曲について、ピアノ学習者にとって身近な存在であるツェルニーの練習曲(今回は、主に100番練習曲集)と照らし合わせながら、テクニックや表現のポイントをわかりやすく解説してくださいました。

 南雲先生は、各曲とも非常に詳細な解説をされましたが、全体で共通していたことは、「左手の表現を聴くこと」。左手は、音楽で大切な要素である拍子とリズムを担当しているからです。そのひとつとして、シューベルトは、レントラー、ドイツ風ワルツ、メヌエット、エコセーズ(この中では唯一の2拍子)などといった舞曲を数多く作曲しており、それらのリズムパターンが今回取り上げられた即興曲の左手に多用されていることが挙げられます。そのため、3拍子の円を描くようなリズムや、バスのラインが常に先へ先へとハーモニーの変化を導くことを意識しながら、右手のメロディを支えていくことがポイントとなります。さらに、先生は楽興の時ヘ短調Op.94-3においても、エコセーズに類似した2拍子のリズムが用いられていることをご指摘くださいました。このように見ていくと、左手の伴奏は楽曲を表現する上で重要な役割を担っていることがわかります。

 次に、即興曲と楽興の時を学ぶ際のポイントについて、ツェルニー100番練習曲集の活用例と共に一部ご紹介いたします。

即興曲

変ホ長調Op.90-2:主部の右手の3連符は、拍と拍のつながりを意識しながら、次に登場する音符を求めるように、滑らかに弾くための練習として、第37番(30番練習曲集の第20番も有効)を例に挙げられました。

変イ長調Op.90-4:主部の右手の16分音符における2と1の指による連打を滑らかに弾くためには、第96番を1、2、1の運指で練習するとよいとのことです。また、30小節目からは、右手をコロコロと忙しなく動かしながら、同時に左手のメロディを歌わせることが求められますが、この方法の練習として第15番、第88番を薦めてくださいました。

変イ長調Op.142-2:主部のコラール風な旋律では、第63番と第92番を例に、メロディを保持しながら内声を弾くことを教えてくださいました。その際、ハーモニーの扱い方、響かせ方などを十分意識することが重要とのことです。また、ツェルニーの練習曲でも曲に応じてペダルを使用して良いと仰っていましたが、同じハーモニーは踏んだままではなく、拍ごとや音の運びに応じて細かく踏みかえることがポイントとなるようです。

楽興の時

ハ長調Op.94-1:この曲は気ままな即興性に満ち、指をスッと鍵盤におろすような指先のテクニックを用い、ありのままに弾くときれいに聴こえるようですが、3連符と8分音符が隣り合わせとなったリズムやポリフォニックな書法など、非常に複雑な書かれ方をしています。これらの要素を拍にとらわれず、さりげなく表現できるようになるためには、3:2のリズムの練習として第22番を、指先を鍵盤上で保持しながらポリフォニックなメロディの弾くための練習として第20番と第26番を、中間部の歌わせる練習としては第74番を挙げられていました。

ヘ短調Op.94-3:この曲は、左手の裏打ちのリズムを活かすと同時に、右手の3度や6度といった重音をきれいに響かせることが求められる難曲です。ここでは、重音のテクニックを強化するために、第16番、第28番、第43番、第44番、第60番を紹介され、演奏のコツとして、例えば、1,2を下声部、3,4,5を上声部というように、5本の指を2つに分けて考えると良いとご指導くださいました。

 最後に、シューベルトの楽譜は記号などの情報がシンプルであるために、弾き手が音楽の流れを把握しながらしっかりと読み解かなければならないことを述べられ、よりシンプルに歌わせる例として第51番と第66番を演奏して下さり、講座を締めくくられました。

 シューベルトの作品がもつ音楽的な素晴らしさとそれを表現するための演奏の難しさ、ツェルニーの練習曲集がもつ、どんな状況でも対応できる柔軟さやクオリティーの高さを実感した驚きの2時間でした。ピアノの指導者や学習者にとって非常に嬉しい内容が満載の南雲先生の新ピアノレパートリー講座、次回はショパンのワルツとノクターンをテーマに2月15日に開催されます。ご期待ください。

(K.S)

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