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南雲竜太郎 新ピアノレパートリー講座 開催レポート
心に響く演奏のために・・・古典派・ロマン派への導入
〈演奏と解説・全3回シリーズ〉
第1回 2012年11月14日(水10:30〜12:30  
ベートーヴェンの月光とやさしいソナタ
講師:南雲竜太郎
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 丁寧な解説と素晴らしい演奏で好評を博している南雲竜太郎先生のピアノレパートリー講座、待望の新シリーズ『心に響く演奏のために・・・古典派・ロマン派への導入』(全3回)が始まりました。このシリーズは、中級程度のピアノ学習者が学習用の教材を終え、古典派以降の作品へ取り組む際、より音楽的で魅力的な演奏をするにはどのようにすればよいかということを、楽曲構造、音楽表現、テクニックなどの観点から考察するというものです。第1回目のテーマは、『ベートーヴェン 月光とやさしいソナタ』。ソナチネからソナタへ移行するときのポイントを、実演を交えながら丁寧に解説してくださいました。この日、会場にはピアノの先生方を中心に多くのお客様がいらしており、先生の明快なレクチャーに熱心に耳を傾けておられました。

 古典派のソナチネとソナタは、作品を通して楽曲の形式感や音楽的な歌わせ方などを学ぶことができます。まず、これらの作品で用いられている「ソナタ形式」について解説してくださいました。ソナタ形式は、古典派に栄えた形式で、提示部、展開部、再現部という大きく3つの部分で構成されています。以下は、基本的な構造です。

(1) 提示部:楽章全体の核となる2つの主題の提示。

第1主題(主調)―推移―第2主題(長調なら属調、短調なら平行調)―コデッタ(小結尾)

(2) 展開部:提示部で提示された2つの主題を変形、拡大、縮小などの様々な形で展開。(これまでになかった新しい素材が登場することもあります。)

(3) 再現部:2つの主題を主調で再現。

第1主題再現(主調)―推移―第2主題再現(主調)―コーダ(結尾)

 これらの構造を踏まえたうえで、実際の使用例としてソナチネアルバム第1巻のクーラウとクレメンティの作品(同アルバム第4、6,7番)を取り上げられました。これらのソナチネで共通することは、特に再現部においての例外的な工夫(いきなり推移から開始する、調性が規則通りでない、提示部と強弱を変えるなど)が施されていることです。これらの例外的な要素も含め、ソナチネでは、主題などの同じ旋律の表れ方や発展の仕方を学習できます。

 続いて、今回のメインであるベートーヴェンのソナタに移ります。ベートーヴェンは、ソナタ形式を確立し、頂点を築きました。今回取り上げられたソナタは、ト短調Op.49-1、ト長調 Op.49-2、ハ短調 Op.10-1のいずれも第1楽章と、嬰ハ短調 Op.27-2<月光>の第3楽章です。これら4曲は、順を追って規模が大きくなり、構造的にも音楽的にも複雑になります。先生は、楽譜の隅々までに及ぶ詳細な分析と、演奏のポイントを丁寧に解説してくださいました。一部ご紹介いたします。

 ト短調Op.49-1 第1楽章:細かいアーティキュレーションは言葉のイントネーションを表しているため、生きた音と拍の存在感が損なわれないように。中でも、2つの音を繋ぐスラーは、2つ目の音が減衰しすぎないように指先で行うと良いとのことです。

 ト長調 Op.49-2 第1楽章:この作品は、原典版にはスラーがほんの数ヶ所記されているだけで、強弱が一切書かれていないため、校訂版とも比較をしながら解釈しなければなりません。例えば第1主題とその後の確保での音型の変化を意識しコントラストをつけるなど、それぞれの主題の性格や音の動きに応じて表情を作ることが求められます。先生は、様々な表現の可能性を提案してくださいました。

 ハ短調 Op.10-1 第1楽章:音楽のエネルギーやスピード感が表されています。そのため、4分の3拍子を4分の6拍子のように2拍子でとらえることと、劇的な効果を出すために休符が重要になることをお話しされました。

 嬰ハ短調 Op.27-2<月光> 第3楽章:ベートーヴェンがソナタ形式の頂点を築いた曲の例で、他の3曲に比べコーダが充実し、大規模な構成になっています。第1主題のアルペジオでは、2小節ずつのかたまりでとらえ、絶え間なく動く運動性を聴かせること。また、177小節からのアルペジオは、和声の変化を意識して、少しずつペダルを減らしながら音の粒を聴かせつつ高さを意識するとよいそうです。

 また、全体で共通していたことは、「曲の性格を捉えること」と「2つの主題の存在をはっきりと意識すること」です。先生は、講座のまとめとして、演奏する際にまず分析をして楽譜に何が書かれているかを読み解くことが重要ですが、分析が独立した作業ではなく演奏に活かせるように、両方が自然に結びつくようにすることが大切と述べられていました。

 最後に設けられた質問コーナーでは、ソナタを演奏する際、誰もが疑問を抱く「リピート」についてのご質問がありました。リピートする際は、意図的に工夫しようと思わず、自然な気持ちでと教えてくださいました。

 あらゆる側面から作品の魅力が味わえた濃密なレクチャーでした。次回は来年1月16日、シューベルトの即興曲と楽興の時をテーマにお話してくださいます。是非、足をお運びください。 

(K.S)

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