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KMAP
久元祐子 ピアノ演奏法講座
『続々々・一歩上を目指すピアノ演奏法』(全5回シリーズ)

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
第5回 2013年3月6日(水)10:30〜12:30
バッハのインヴェンション 開催レポート

 

 

 毎回好評を博している久元祐子先生の「続々々・一歩上を目指すピアノ演奏法」シリーズ(公開講座)も、今日で最終回を迎えました。本日のテーマは「バッハのインヴェンション」でした。

 《インヴェンション》は、長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽教育のために書かれた曲集ですが、単なる教材という性質を超えて、音楽的な深みを内包しているだけに、小さな子供たちにとって《インヴェンション》は高いハードルです。バッハの楽譜をどのように読み解き、読み取ったものをいかに演奏につなげるか。この2点こそ、今日の久元先生のお話の中心だったように思います。本日の講座で先生は第1番と第2番を詳細に説明して下さいましたが、ここでは第1番に絞ってご紹介します。

 楽譜を見た時、まずは終止形を手掛かりに、どこからどこまでが1セクションなのかを考えてみる。これが1つ目のポイントです。終止する箇所では、調性感が顕著に表れるので、調に合わせて音色や曲想を決定します。この時、インヴェンションでは、2声部のみの音の重なりの中にハーモニーを読み取る(聴き取る)ことも大切です。では、第1番では終止形はどこに見つかるでしょうか。またそれは何調の終止形でしょうか。まず、第6〜7小節目にG durの終止形が、第14〜15小節目にa mollの終止形、そして第21〜22小節目にC durの終止形があり、第1番は3つのセクションから成り立っていることが分ります。

 楽曲の大まかな構造が把握できた後、2つ目のポイントとして、どのような楽想(モチーフ)が用いられているのか、それらがいかに組み合わさっているかを分析してみます。右手冒頭第1小節目に注目です。久元先生は、C-D-E-F-D-E-C-Gの音型を楽想a、続くC-H-C-Dを楽想bとし、さらに楽想aのうち、C-D-E-Fという順次進行音型をa-1、D-E-C-Gというジグザグの音型をa-2と分類していらっしゃいました。驚いたことに、第1番の全22小節は、楽想a-1、a-2、b、またその反行形や拡大形の組み合わせによって作られているのでした。

 そして、久元先生のインヴェンション講座の最大の特徴は、以上のような楽想構造の分析にとどまるのではなく、楽想分析がフレーズの作り方や強弱、アーティキュレーションの判断材料になるということ、さらにこのようなステップを踏むことで、音楽的な演奏がもたらされるということだと思います。例えば、第3小節目左手には、楽想a-1が2つ(H-C-D-E、G-A-H-C)あります。続く第4小節目では、そのa-1が拡大されることで(E-Fis-G-A-H-C)、フレーズが長くなり、以前より盛り上がりが出るのです。また、盛り上がりを見せる第4小節目以降では、FisというC dur(第1番の主調)にはない音も出現しており、C durでない調へ移行しようとしている、そのような変化も併せて読み取ることができます。

 以上にご紹介した例は、ほんの一例にすぎません。

 まずは楽想分析を行い、楽想が全22小節間にどのように組み合わせられているのかを確認した上で、それらの組み合わせがどのような表現になりえるのか考えてみると、新たな発見があるかもしれませんし、より説得力のある演奏が出来るのではないでしょうか。

 久元先生、半年にわたり、充実した講座シリーズをありがとうございました。

  (A・H)

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