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西原 稔 公開講座 開催レポート(3- 全3回シリーズ)
「ブラームスの世界」
2011年10月7日(金) 10:30 講座(10:30〜12:30)
主催:カワイ音楽振興会

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 西原稔先生の公開講座「ブラームスの世界」、第三回目となる本日のテーマは「後期のピアノ小品集の様式」です。

 ブラームスが1863年に《パガニーニの主題による変奏曲》を完成させてから、再びピアノ作品の創作と向き合うまで15年の月日を要しました。この中断期を経て1878年に作曲された《8つの小品集》は、後期のピアノ作品の入り口と言えます。作品から漂う陰鬱な雰囲気から、ブラームスは厭世的なイメージを持たれることの多い人物ですが、晩年に至っても旺盛な作曲活動ぶりを見せていました。とくに後期に作られたピアノ小品は何れも完成度の高い練り込まれた楽曲ばかりで、ブラームスの音楽の集大成と言っても過言ではありません。

 特筆すべきは、長調と短調のあいだを彷徨う和声感と、音程関係への意味付けであると先生からご指摘いただきました。シェーンベルクが弟子にブラームスの作品から和声を学ぶよう勧めたというエピソードが残っていますが、彼はそれほど先見の明のある作曲家であったと言えます。長調とも短調とも判別しにくい曖昧な響きは、従来の和声を逆手にとることで生み出されたものです。本来ならばトニックに解決するドミナントの和音をサブドミナントへと進行させたり、第一転回形で第三音が重複したりすることは、和声のルールとして避けられてきましたが、それを敢えて行うことで和音進行の推進力を軽減させ、聴くものに曖昧模糊とした印象を与えます。また、楽曲の中で特定の音程関係に意味付けがなされていることも特徴であると仰っていました。とくに2度音程の使い方に注目すると、そこからブラームスの意図を汲み取ることができるそうです。

 先生が、昔からこれじゃないとブラームスの気持ちがわからない、と仰って見せて下さった楽譜は、ページが一枚ずつ外れてしまうほど使い込まれたものでした。ただ譜面を追うだけでなく、書かれていることをよく読み込み、そこにどのような意味付けがなされたか想像すること。それこそがブラームスの音楽に触れる醍醐味なのかもしれません。先生、今日は充実したレクチャーをありがとうございました。

(A. N.)

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