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国立モスクワ音楽院ピアノ科学科長
アンドレイ・ピサレフ教授 公開レッスン 開催レポート
2017年
1月25日(水)10:30〜12:30
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 1月25日、国立モスクワ音楽院ピアノ科学科長のアンドレイ・ピサレフ教授による公開レッスンが行われました。ここパウゼでは、毎年8月に開催されるロシアンピアノスクールin東京で講師を務めておられますので、ご存知の方も多いかと思います。今回の受講生は、小井土文哉さん(大学3年)と横井舞菜さん(高校2年)のお二人で、通訳を務めてくださったのは、ピニストの深川美奈先生です。

 ピサレフ教授のレッスンは細部に及ぶものでしたが、「譜面上の指示をどのように解釈して再現するか」といったことに重きを置かれていたように思います。これは簡単なようで非常に難しいことですが、受講生のお二人は、教授の的確なアドバイスに、真剣に耳を傾けながら柔軟に対応され、演奏が次第に磨かれていく様子は大変印象的でした。

 前半は小井土さん。ショパンの《舟歌》Op.60で受講されました。ゆったりとして音の表情を丁寧に表現されていた演奏に、教授は「とても良く弾いていました。とても美しいです。」とコメントされ、フレーズの捉え方を中心に、旋律がどのように流れているか、どの音が頂点になるか、どのように音が繋がって行くかを見た上で、それぞれにふさわしいタッチや強弱のつけ方、内声とのバランスの取り方などといった表現方法を、旋律を歌いながら細やかに指導されました。そして、同じフレーズが繰り返されるときは、和声の変化を注意深く聴くことも述べておられました。また、フレーズを美しく表現するためには、レガートも重要になってきます。レガートの弾き方として、手全体を脱力し鍵盤に置くようにして、指だけでなく手首を柔軟に使う方法を伝授されました。レッスンが終わる頃には、小井土さんの演奏もフレーズの流れが大きくなり、歌のような滑らかなラインが出来ておりました。

 後半の横井さんは、チャイコフスキーの《ドゥムカ》Op.59で受講されました。歌うような柔らかさとバレエ作品のような場面の変化が感じられた演奏に、教授は「とても良い演奏でした。」述べられ、ルバートの弾き方を中心にアドバイスされました。ロマン派の作品は、まず曲の内容がどういうものかを考え、楽譜に従った上でルバートをすることが大切になります。チャイコフスキーの作品は、テンポをあまりに外してしまうと曲がつまらなくなってしまうために難しいのだそうです。冒頭のAndantino cantabileの部分では、拍を感じること、休符を守りペダルを使いすぎないこと、音価の長さを守ることなどを。続くCon animaからの部分では、リズムを正確に弾くことや旋律の表現の仕方など、いずれも、曲の本来のテンポと楽譜の指示を忠実に守りつつ、一緒に演奏をしながらその表現方法を丁寧に指導されました。すると、横井さんの演奏はさらにメリハリが効いて、より豊かな音楽へと変化して行きました。

 ピサレフ教授のレッスンを通して、作曲家が譜面上に残した指示の裏には多くの表現の可能性が秘められており、それをいかに読み解いて音に蘇らせるかといったことの大切さを学べ、筆者にとっても大変勉強になりました。

(K.S.)

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