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2011ロシアン・ピアノスクールin東京
2011年
8月20日(土)  
アンドレイ・ピサレフ 公開レッスン 開催レポート
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 来日されたモスクワ音楽院の著名な先生方により、8日間にわたり日々ハイレヴェルなレッスンが繰り広げられている『ロシアン・ピアノスクールin東京2011』。最終日となる本日は、アンドレイ・ピサレフ先生の公開レッスンを聴講しました。今回は中学3年生のクラスで、受講生は、川地咲由里さん、福田木綿子さん、川崎槙耶さんの3名です。約3時間にわたり、ピサレフ先生の丁寧かつ明快なレッスンが展開されました。

 最初は川地さんによる、J.S.バッハ《平均律クラヴィーア曲集第1巻》より第13番嬰へ長調と、ベートーヴェン《ピアノソナタ第3番 ハ長調 Op.2-3》より、第1楽章です。

 まずはJ.S.バッハから。プレリュードでは、《平均律クラヴィーア曲集》のプレリュードは構築的にできているものもあれば、即興的に弾いて良いものもあり、多様性に富んでいます。このプレリュードは牧歌的かつ即興的に弾いて良いとのこと。冒頭のから登場するアルペジオは、指を上げすぎずに手首を使って指同士を繋げるようなタッチで。2〜3小節目などの形では、左右のかけあいや右手の音程の響きを、音を聴き感じながら弾くこと。トリルは上の音から入れるが、主音を意識すること。カデンツでの和声進行の終わりに耳を傾けること。26小節目からの嬰ハ音のバスによるオルガンポイントに入る際は、少し時間をかけて入って良いなどといったことをお話しされました。

 一方フーガでは、規則正しくかっちりと、全声部を対等に語るように弾きます。主題は少し優しい感じに。また、この主題は途中に休符が挟まれ、一見フレーズが2つに区切れているようですが、1フレーズにし大きな流れで声部の統一感を出すこと。各声部とも旋律の横のラインを感じて弾くことなどを解説されました。なお、このフーガは手首でフレーズを作りつつも、タッチは指先で横につなげる感じで弾くと良いとのことです。

 続いてベートーヴェンです。ベートーヴェンのソナタは、小さなモティーフを発展させ到達させるといった特徴があるため、その到達感がわかるように弾くことが求められます。このソナタでは、例えば第1主題は弦のオーケストラをイメージするなど、楽器やトゥッティといったオーケストレーションを考えると良いそうです。テンポ、リズム、休符は正確に守ること。装飾音や16分音符は、音の動きを出しつつ最後の音まで緊張感を持って音の粒を明瞭に弾くこと。フレーズの頂点を作り意識すること。fやsfのときのスタッカートは、叩かずテヌート気味で弾くと良いなどといったことを教えてくださいました。

 次は福田さんによる、ベートーヴェン《ピアノソナタ第11番 変ロ長調Op.22》より第4楽章ロンドです。

 テンポ、リズム、休符は正確に守ることや、装飾音や16分音符は走らず明瞭に弾くことに加え、ロンドの楽章のロンド主題は、明るく生き生きとした性格を持つため、この楽章の主題も明るく朗らかに弾くと良いこと。肩を落として腕の力を抜き、レガートで旋律のフレーズの終わりまでしっかり歌わせること。旋律の繰り返しがオクターヴになった時は2つの声部になったことを考えて弾くこと。ロンド主題が登場するときは、その都度丁寧に入り、すぐにもとの動きに戻すこと。転調しているところで少し音色を変化させることなど音楽のキャラクターを作ることが大切だということを解説されました。

 最後は川崎さんによる、リスト《超絶技巧練習曲 第10番 ヘ短調》です。

 この練習曲は大変技巧的で速く弾きたくなるような曲ですが、音楽は言葉の話し方と似ているため、あまりに速すぎると言葉が聞き取りづらくなるのと同じように、音楽がわかりにくくなるのだそうです。冒頭などの伴奏は、上声部を旋律として聴き、ハーモニーを感じながら、レガートかつ明瞭に弾くこと。そして、例えば、3小節目から始まるオクターヴの旋律はユニゾンのように、2度音程で動く音型はため息のように、31小節目からは、ロマンティックな歌のように、長く呼吸を続けながらたっぷりと広げてゆくなど、メロディはフレーズを感じながら歌い語るように弾くことなどを教えてくださいました。

 この紙面には書ききれないほど密度が濃く充実したピサレフ先生の公開レッスン。受講生の皆さんの演奏がみるみる変化し一層洗練されてゆく様子は驚くほどでしたし、実際に鍵盤に触れていなくても、なるほどと思えるように的確でわかりやすい指導は、目から鱗でした。受講生の皆さんにとって更なる励みとなったことでしょう。

 なお、ピサレフ先生は来年2012年に開催される第8回浜松国際ピアノコンクールで審査員を務められます。

(K.S)

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