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 ホーム(ニュース)トピックス > 2010年 > 久元祐子 ピアノ演奏法講座 第4回 開催レポート

2010年2月19日(金) 10:30開演(10:30〜12:30)
久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『一歩上を目指すピアノ演奏法』第4回(全5回シリーズ)
「ベートーヴェン 〜精神性に近づくために〜」
ベートーヴェン :ピアノ・ソナタ ハ長調 《ワルトシュタイン》ほか
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 今回で4回目となる久元祐子先生のピアノ演奏法講座に参加いたしました。本日のテーマは「ベートーヴェン〜精神性に近づくために〜」です。第一主題、第二主題…という楽曲の構成だけでなく、細やかなアーティキュレーションのつけ方に重点を置いた久元先生の講座は、実際のピアノの指導にとても役立つものではないかと思います。

 最初の題材は、ピアノ初心者が一度は挑戦する《エリーゼのために》でした。この曲はベートーヴェンのピアノ曲の中では即興的な性質が強く、拍節感を強調する必要はないとおっしゃる久元先生は、たとえば次のような弾き方をアドバイスしてくださいました。冒頭の弱音の「ミレミレミシレドラ」では、最後のラにアクセントがつかないようにしなければならないので、手首をさっとあげる。光が差し込んでくる「シドレミ」では、打鍵のスピードをわずかに上げる。続いて転調先のヘ長調では、レガーティッシモで隣り合う音をわずかに重ねながら弾く。これ以外にも、装飾的なパッセージは軽く弾く、3連符は風が吹くように自由に弾く等、優雅な1曲に仕上がるようなコツをたくさんお聞きしました。

 次の題材は、技術的にも格段に難しいベートーヴェンの中期の傑作、《ピアノ・ソナタ ハ長調 「ワルトシュタイン」》でした。久元先生は第1楽章から第3楽章までをすばらしい実演をまじえてご教授くださいました。この曲をものにして弾くには、強弱のコントロールに加えて、演奏者が自分なりのイメージをはっきりもつことが大切であるようです。強弱に関しては、ff、pp、その間の迷いをはっきり形作る、そのためにはデクレッシェンドでなるべく弱音まで落とすことがポイントとのこと。そして久元先生は、「ワルトシュタイン」に鮮やかな自然のイメージを描いてくださいました。たとえば第1楽章冒頭の和音は黒雲が近づいてくる、右手に稲妻が走る、第2主題では太陽の光が差し込んでくる……。この第2主題には「重い」、「思い」をかけるのだそうです。そのほか、ベートーヴェンがこの曲を作曲する直前に贈られたエラール・ピアノの特性も知らなければなりません。空間に広がる音色の世界を可能にした点、ペダルは現在のピアノよりも濁りにくかった点についてお話がありました。

 名演奏家たちが弾く英雄的で爽快なベートーヴェンと、自分が弾くベートーヴェンはかなり違っています。本日教えていただいた幾つものポイントをヒントにすれば、単純な音の反復ももっと確信に満ちて音楽的になるのかなあと思いました。

( S. K.)

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