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2010年1月20日(水) 10:30開演(10:30〜12:30)
久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『一歩上を目指すピアノ演奏法』第3回(全5回シリーズ)
「J・S・バッハ 〜バッハの宇宙〜」
J・S・バッハ :平均律クラヴィーア曲集 第1巻第1番 ハ長調 ほか
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」久元祐子先生の『一歩上を目指すピアノ演奏法』講座、「J.S.バッハ――バッハの宇宙」に参加いたしました。会場のパウゼでは客席の前半分に机を置き、出席したピアノの先生たちが熱心にメモをとっておられました。
本日久元先生が教えてくださったのは、J.S.バッハを美しい“首飾り”のように弾く方法。「バッハの宇宙」とは、和声の世界なのでした。バッハのひとつの曲は、カデンツや転調をくりかえしながらも、どこの部分も抜け落ちてはならないほどしっかりとつなぎあわされて、ひとつの「アフェクト」(気分)を表現しているというのです。まず久元先生は、《平均律クラヴィーア曲集第1番》を例に、和声の連結や、賛美歌に使われるIV度での曲の終止、ベースが切れないような指使い、ペダリング(2度などきたない響きになるところを除いて踏んだほうがよい)などを、ご説明くださいました。バッハの時代のクラヴィコード、すなわちチェンバロでは、音は小さくて短く切れてしまいますが、デュナーミク(強弱)がつけられたため、歌うように弾くことが可能であったそうです。バッハが《インヴェンション》の序文に「カンタービレの奏法」を習得するようにと記したという点を、久元先生は強調なさっていました。楽譜には何も書かれていませんが、自分でデュナーミクをうまくつけて、連続する和声の情感を表現したいものです。
曲の気分を決めるもうひとつのポイントは、テンポ感です。まず、バッハをはじめるときには、バッハの舞踊曲や変奏曲などに取り組んでみるのがよいそうなのです。その後に《平均律》に入ると、わかる部分が多くなるといいます。久元先生は、《フランス組曲第5番》を例に、舞踊曲の性格や拍を感じさせるタッチの仕方を実演してくださいました。
前打音は強く弾く、延ばしている音に重なる音は軽く弾く、カンタービレとマルカートを弾き分ける、高さや音の密度、遠い調から曲のクライマックスを見分ける……。このような基礎についても、《インヴェンション第4番》《シンフォニア第1番》などを例に確認いたしました。
《平均律》をエチュードのように弾いていると、バッハの時代の音楽は、とても深く人の心に訴えかけるものだった、ということを、つい忘れてしまいます。バッハの和声をもっと感じて弾いてみようと、とても勉強になりました。
(S.K.)
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