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●ロシアン・ピアノスクール in 東京 講師模範演奏レポート
 2008年
8月15日(金)

 

photo by Nora Enzlberger

 ロシアの名門、国立モスクワ音楽院ピアノ科の講師による一週間の短期集中レッスンの幕開けとなったのが、初日に演奏されたネルセシヤン氏とピサレフ氏による模範演奏です。お二人の四手連弾を前に、公開レッスンを受ける受講生たちは、ピアノ演奏におけるあらゆる基礎を、今一度確認し、奏法や表現について考えを深めることになったでしょう。

 1曲目と2曲目はシューベルトの連弾曲。シューベルトのピアノ曲といえば、21のピアノ・ソナタのほかドイツ風舞曲などが思い出されるのですが、親密な空間(特にサロン)における室内楽曲を彼が好んでいたという点では、四手ピアノ曲が30曲あまりも残されていることは驚きではありません。《序曲 ト短調》では、ネルセシヤン氏が第1ピアノで和声的な軸を力強く示し、ピサレフ氏が第2ピアノで主にオクターヴによるメロディを歌います。三和音によって特徴付けられる拍節は、一人で演奏するときでもそろえるのが難しいのですが、非常に息が合って生き生きとした躍動が感じられました。また、平行調へ移行するかなり微妙な色あいの変化が、あのように明確に演奏されるには、相当研ぎ澄まされた感性を必要とします。第2曲目の《人生のあらし》では、シンコペーションのリズムの正確さや、2分割拍子における3連符の走句の弾き方、上声部が伴奏になる際の中声部の旋律の歌い方、遠隔調への移調、テーマ部分の再来を、聴き手に分かるように弾くということがいかに重要なのか、ピアノ演奏において再確認すべき要素がたくさん盛り込まれたレパートリーでした。

 3曲目はビゼーの《子供のあそび》。これも四手連弾曲で、12の場面を描写した小品集になっています。今度は第1ピアノがピサレフ氏、第2ピアノがネルセシヤン氏。一曲ごとが、ひとつの音型を一貫して用いて、それぞれに楽しい曲集です。ねずみのようにちょろちょろ動き回る様子を跳躍音型で表したり(第2曲目「こま」)、昼寝する様子を描写したり(第3曲目「お人形」)、軍隊行進して遊ぶところをファンファーレやマーチ風音型を用いています(第6曲目「ラッパと太鼓」)。まるで19世紀フランスの喜劇オペラを想像させるほどのテンションです。この曲集がさまざまなテクニックや表情をもって演奏されるという点を、今回のピアノスクール受講者に見てほしかったのではないでしょうか。最後に第5曲目「羽根突き」の冒頭部分をアンコール演奏して締めくくった彼らの演奏は、ユーモラスな側面も垣間見せてくれました。

 

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