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●ロシアン・ピアノスクール in 東京 2017 Russian Piano School in Tokyo
ロシアの伝統を受け継ぐ教授達によるピアノ・マスタークラス 〜夢の扉を拓く8日間〜
2017年8月11日(金)〜8月18日(金)
会場:カワイ表参道 〈東京メトロ表参道駅A1出口徒歩1分〉
主催/カワイ音楽振興会
【講師模範演奏】開催レポート
8/12(土)19:00開演 パーヴェル・ネルセシヤン教授
毎夏の恒例となったピアノマスタークラス「ロシアン・ピアノスクール in 東京」の2日目夜は、講師による模範演奏。チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院ピアノ科の、お馴染み、パーヴェル・ネルセシヤン教授によるリサイタルです。
ネルセシヤン教授といえば、その幅広い教授法の中でも、オーケストラやオペラといった、ジャンルを越えた大きな観点からピアノ音楽をとらえるレッスンが印象的ですが、この夜のプログラムはまさに、クラシック、ピアノといった枠には収まらないスケールの楽曲で構成されていました。
1曲目はアメリカの作曲家、サミュエル・バーバーの「遠足 Op.20」。ニューヨークで作曲された4曲から成るアルバムで、ブルースなどジャズの要素がふんだんに取り入れられています。効果的に挟み込まれる不協和音の響きがファンキーで、陽気なテイスト、ロマンティックなテイスト、シンコペーションのきっぱりしたリズム感と、とても個性的。教授の演奏は、その落ち着きと構成力で、聴く側に分かり易さと親しみ易さを伝えていました。音色の心地よさが抜群です。
2曲目はロシアの作曲家、プロコフィエフの「『ロメオとジュリエット』からの10の小品 Op.75」。バレエ音楽「ロメオとジュリエット」を、プロコフィエフ自らがピア ノ曲に編曲した、珠玉の小品集です。オーケストラに全くひけを取らない堂々たる偉容、変化に富んだ音楽の素晴らしさは驚異でした。さすが教授!
憎み合い、争いを繰り返すキャピュレット家とモンタギュー家。人間同士の諍いの愚かしさ、醜さ。尊大かつ迫力の舞踏曲。ロメオとジュリエットの純粋な愛、切ない夢、悲しく惨い運命の暗示…。バレエ全幕を通しで観たかのような臨場感でした。
大きな拍手のあと、感動も覚めやらぬまま、教授がアンコールの1曲目に演奏したのは、ワーグナー=リストの「イゾルデの愛の死」。お腹いっぱいのところに、再び悲劇の愛のドラマが轟きます。すご過ぎです。
アンコール2曲目は、リャードフの「3つのプレリュード Op.57-1」。ロマンティックの質が違います。豊かで透明。
アンコール3曲目は、同じくリャードフの「マズルカ」。コケティッシュな3拍子の演出力に脱帽です。
ネルセシヤン教授のような素晴らしいピアニストのレッスンが受けられる「ロシアン・ピアノスクール in 東京」は絶対素晴らしいと、改めて感じた演奏会でした。
(H.A.)
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