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第18回 「マズルカ…?ポロネーズ…?」
もうすぐ、5年に一度のショパン国際コンクール開幕。特に今回は生誕200周年ということで、ワルシャワ(だけに限らないと思いますが)はただならぬ熱気に包まれています。思い返せば、5年前の今頃私は、9月後半から予備予選がスタートしたため、ちょうど直前のコンディション調整に励み、一喜一憂の日々を送っていました。
ショパンの生家ジェラゾヴァ・ヴォラでリサイタルをさせて頂いたり、遺品に触れる機会も増え、それまで遙か彼方の神のように思っていた「ショパン様」が、この世に実在した「生身の人間」であったことを改めて認識したのも、この時期でした。
そしてその頃、もう一つ印象的だった出来事といえば・・・。
ポーランド人なら誰でも、マズルカやポロネーズが踊れるもの、と何の根拠もなく思い込んでしまっていた私に、ポーランド人の知人が浴びせたこの一言!
「マズレック(マズルカの一種)?うん、甘くておいしい!ポロネーズ?あぁ、燃費が悪いね!」
「○☆%&$#!!!???」(←混乱している私)。
この真相やいかに・・・?
マズレック=イースターに欠かせない甘〜〜〜いケーキ。
ポロネーズ=今では所有者のほとんどいない古い車のブランド。
私のような思い込みを持っている外国人に向けて、冗談というか皮肉の意味も込めて、現代人にとってはショパンの作品よりもこちらの方が一般的であると言いたかったようです。
この冗談はさておき・・・、このとき思い知ったのが、全てのポーランド人が民族音楽に慣れ親しみ、熟知しているとは限らない、ということ。そんなことは、日本人である私自身が、日本の民族舞踊に詳しくないことに置き換えれば、簡単に気づけるはずなのですが、コンプレックスが生み出す思い込みとは困ったもの。もちろん、それらの音楽や踊りを身近に感じて育つことができるポーランド人にしかわからないことはたくさんある。でも、ポーランド人であっても、まるで異国文化に触れるように民族音楽に取り組む人もいるのです。
それにそもそも、ショパンのマズルカは、民族色より「ショパンの色」の方が濃いのだから、踊りを知っているからといって素晴らしい演奏ができるとは限らないわけで・・・。
このことは、5月に行われた「ショパンの舞曲講座」で、小林仁先生も仰っていました。
これからはますます、まっさらな心で、心に垣根を作らず、作品に飛び込んでいきたい。この記事を書きながら、今改めてそう思います。
しかしながら、民族音楽がケーキや車の名前になっているポーランド。これぞやはり自国の文化に誇りを持っている証でしょう。
この夏のポーランド。北部の琥珀で有名なリゾート都市Sopotです。
ショパンが17歳の時に訪れた町、Waplewo Wilekieでのコンサートの様子と、記念碑。
<コンサートのお知らせ>
カワイコンサートNo.2150
根津理恵子ピアノ・リサイタル
2010年9月21日(火) 19:00開演
オール・ショパン・プログラム
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