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第17回 「ジュネーブ・国際連合欧州本部リサイタル

〜2010年ショパン生誕200周年へ向けて〜」

 

 来年は皆様ご存じの通り、ショパン生誕200周年を迎えます。そのプレ・イヤーで没後160周年に当たる今年は、ポーランドにおける共産主義が崩壊して20年、更には日本とポーランドの国交が開かれて90年という、たくさんの記念が集中した節目の年。

 先月24日、それら全てを記念した式典が、国際連合欧州本部(ジュネーブ)にて行われ、その席でソロ・リサイタルをさせて頂きました。

国連正面

コンサートポスター

 プログラムは、ポーランドへ祝福を込めて、マズルカとポロネーズをメインに、ノクターン遺作嬰ハ短調(珍しい手法を用いた自筆譜*による解釈)、そしてパデレフスキの作品数曲を用意いたしました。

 パデレフスキはかつて、ジュネーブ近郊の町・モルジュに一時期居を構えていたこともあり、今回の会場となった「国連第14ホール」は別名「パデレフスキホール」とも称され、ホール下手側には銅像が厳かに佇んでいます。そして我々日本人にとって忘れてはならないのが、90年前の1919年、日ポが国交を結んだ時ポーランドの首相を務めていたのがパデレフスキであったこと。もともと作品自体の魅力に私はとても惹きつけられていましたが、この史実を知ったことでますます彼に対する尊敬と愛情が深まりました。

 さて式典当日。舞台上にはこの日のために運搬されたアリー・シェフェール作「ショパンの肖像画」が立て掛けられ、厳かでありながら華やかな雰囲気の中、式典は始まりました。

 国連の文化活動担当ディレクター、在ジュネーブ・ポーランド大使、そしてショパン自筆譜専門学者による30分ほどのスピーチの後、リサイタルへと続きましたが、控え室に流れてくるそのスピーチを耳にするうちに、改めてポーランドが歩んできた歴史の重みをヒシヒシと感じ、またこの舞台を任されたことへの責任感と緊張感が高まり、身も心も引き締められていきました。

 ステージへ上がると、敬愛するポーランドの英雄二人の銅像と肖像画に見守られ、緊張感も心地よく、温かいお客様に囲まれて演奏させて頂き、至福の時でした。

 今回の出演を通して、歴史に刻まれた数々の偉大な記念に敬意を表すと共に、この素晴らしい舞台へ、両国を繋ぐアーティストとして日本人の私を選抜して頂いたことに、心から感謝をしております。演奏後のレセプションでは、あるポーランド人の方から「あなたの中にあるショパンやポーランド音楽に対する魂に共感した。ずっと大切にしてほしい。」とのお言葉も頂き、これからの人生への大変な励みになりました。

ショパン肖像画と共に

 そして、忘れられない出来事がもうひとつ。今回用意して頂いたピアノは、以前ヴェルヴィエ音楽祭で使われたものだそうで、その時に弾かれたアーティストのサインがピアノの中にのこされていたのですが、偉大なアーティストの息吹が宿っているからでしょうか、えもいわれぬ深い響きで、その美しさにずっと浸っていたくなるような不思議な引力をもつ楽器でした。人との出会いと同じく、楽器との出会いも、人生を豊かにしてくれるもの。大切にしたい「一期一会」です。

左から国連文化活動担当ディレクター、私、在ジュネーブ・ポーランド大使、ショパン自筆譜研究家Adamczyk-Schmid女史

 この式典の数日前には、パリのブローニュの森・バガテル公園で開かれた「ショパン・フェスティバル」では、「24の前奏曲」を演奏してまいりました。この日はフランス全土が音楽でいっぱいになる「Fete de la Musique(音楽の日)」だったこともあり、会場のお客様の盛り上がりが絶好調で、熱い雰囲気に後押しされるように、私もエキサイトして演奏させて頂きました!

 パリ滞在中は、現地在住のジャーナリストさんでピティナ海外プロジェクト社外担当の菅野恵理子さんに、いろいろとお世話になりました。恵理子さんのブログでも、このフェスティバル関連を取り上げて頂いたので、ご紹介いたします。http://www.cafeblo.com/eris/archive-20090702.html

 来年は、ショパン生誕200年の陰に隠れてしまってはいますが、パデレフスキの生誕150年でもあり、二人の作品を演奏する機会が今後さらに増えてくることと思いますので、知られざる自筆譜や名曲発掘を含め、毎回何かしらの新鮮な情報や感動をご提供できるよう、更なる研究と演奏を続けてまいります。2010年がますます楽しみです!

 (*ノクターンは、マヨルカ島のヴァルデモサ修道院「ショパン&サンド博物館」に所蔵されている、自筆譜をもとに演奏しました。一昨年、ヴァルデモサの由緒ある「ショパン・フェスティバル」で演奏させて頂いた際、ほとんど知られていない、ポリメトリックを用いたこの自筆譜に出会いすっかり魅了されたのですが、満を持して今回のプログラムに取り入れることを決めました。ショパン自筆譜研究の第一人者であるBozena Adamczyk-Schmid女史いわく、この譜による解釈の公開演奏は、ヴァルデモサ以外では初演とのこと。自筆譜研究は奥が深く終わりのない旅ですが、私も研究を重ね、日本でも演奏していきたいと思っています。)

根津理恵子

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