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中井 正子 シューベルト:即興曲集 全8曲 ピアノ公開講座
開催レポート
第4回 2020年 1月17日(金)10:30-12:30 
♪即興曲 第3番 変ロ長調 Op.142-3 D935  即興曲 第4番 ヘ短調 Op.142-4 D935
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 中井正子先生によるシューベルト《即興曲集》の公開講座、本日がいよいよ最終回となりました。

 本日のテーマはOp. 142-3とOp. 142-4。とりわけOp. 142-3は発表会の演目として人気のある作品であり、楽譜を手にいらした聴講者の方々も、一段と熱心に先生のお話に耳を傾けていらっしゃいました。

 先に解説されましたOp.142-3は《ロザムンデ》というシューベルト自身による劇音楽から、テーマ旋律が取られています。一見シンプルな二部形式に見えますが、その中にも突然のト短調への転調、音域の変化の鮮やかさ、コーダの奥深い響きなど、シューベルトならではのセンスが窺えます。また、ピアノ愛好者でしたら多くの方が耳馴染みであろうテーマ旋律も、少し指使いを変えてみるだけで、音色が大きく変わります。第1変奏と第2変奏は、同じテンポ感の中で右手が軽やかに動きます。これらの変奏で安定感と躍動感を両立させるには、シンコペーションのリズムを適切な重さのアクセントで際立たせ、右手の素早いパッセージをレガートに聴かせつつも指先だけノン・レガートにする、といった工夫が必要です。第3・第4変奏はシューベルトの転調の妙技がもっとも味わえる変奏で、そのハーモニーの変化をよく理解して弾く必要があります。第5変奏はとても遊戯的な印象のある変奏ですが、聴き手にそのように聴かせるには、地道にテクニック面の補強を図る必要があります。中井先生は練習方法や指使いの案について、とても具体的に説明されていました。

 後半に解説されましたOp. 142-4は、ジプシー風のリズムや華やかなカデンツァ、いたるところに現れるヘミオラによって、エキゾチックな雰囲気や即興性が演出されています。やはりシューベルトの有名な作品である《楽興の時》を彷彿とさせるのもまた、興味深いところです。中井先生はそうしたリズムの工夫について、片手ずつ楽曲を分解しながら説明し、技術的に難しい3度の連続や左手の跳躍について、その練習方法を解説されていました。一方の中間部は、やはりシューベルトの音楽の要となる転調の創意工夫が随所に見られます。特にこの楽曲はテンポも速くあっという間に一連の変化する和音が通り過ぎてしまいますが、そうした音楽的瞬間を見逃さないことが、より美しく楽曲を演奏するのに必要となります。

 本日は《即興曲集》の講座の最終回ということで、改めて中井先生は、シューベルトの楽曲が一見シンプルであるからこそ奏者に様々な解釈の余地が残され、また奏者には妥当な解釈のできる音楽力が求められることを、まとめとして強調されました。帰り際にはOp. 142-3の管弦楽版がCDで流され、最後の最後までシューベルトの音楽を存分に味わうことのできた、充実の講座でした。

(A. T.)

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