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中井 正子 シューベルト:即興曲集 全8曲 ピアノ公開講座
開催レポート
第3回 2019年 12月13日(金)10:30-12:30 
♪即興曲 第1番 ヘ短調 Op.142-1 D935  即興曲 第2番 変イ長調 Op.142-2 D935
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

  中井正子先生によるシューベルト《即興曲集》の公開講座も、本日で3回目となりました。本日はOp. 142の最初の2曲がテーマ。いわゆる発表会の定番曲となっている作品に比べると演奏頻度は少ないものの、やはりシューベルトの晩年の音楽観を知ることのできる、興味深い楽曲となっています。

 先日からこの講座のキーワードとなっているのが「調性」。シューベルトの創作期は古典主義時代の代表格とされるベートーヴェンと殆ど変わりませんが、楽曲中の転調の仕方は大きく異なっており、その点が次のロマン主義時代との接点だと言われています。たとえ譜面上では難しく見えない箇所でも、奏者がハーモニーをよく理解して演奏しなければ、聴き手にとって魅力的に響かないところが、シューベルトを弾きこなすうえでの難しいところです。本日も中井先生は、楽曲中の移ろうような転調を丁寧に説明しながら、講座を進めていました。

 Op. 142-1は《即興曲集》の中でも特にボリュームのある楽曲で、ソナタ風の楽曲構成を持っているうえ、シューベルトの交響曲にも似たところがあります。その一方で古典組曲やバロック・オペラの序曲にも近しい音楽性も有しており、冒頭の付点のリズムはそのことを想わせます。さらに、途中の細やかに揺れ動く音型はヨーデルを模したようにも聞こえ、ロマン主義の音楽の特徴の1つでもある民族性も感じられます。対照的に、Op. 142-2はシューベルトが多々残した短い舞曲との接点が強く、サラバンドのリズムや舞曲にはしばしば挿入されるトリオを持っています。このように《即興曲集》はロマン主義の幕開けを飾る音楽でありながら、バロック時代や古典主義時代から脈々と受け継いできた西欧の音楽を凝縮したものでもあり、興味深い限りです。

 曲想のことはもちろんのこと、中井先生のお話はペダルさばきやリズムの切れが悪くなりやすい箇所への対応など、実際の練習へのアドバイスも多分に含まれていました。模範演奏もたくさん聴くことができ、ピアノの学習者にとっては非常に有意義な時間となる講座でした。

(A.T.)

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