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パスカル・ドゥヴァイヨン 教授の
『 一度は勉強しておきたいピアノ作品』開催レポート
〜新・ 作曲家別に見る演奏学習法 公開講座シリーズ 〜
Vol.1 作曲家と仲良くなるには、付き合い始めが肝心
第1回
 2019年9月6日(金)10:00 開場 10:30 開講
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
シューマン 第1弾 子供のためのアルバムより抜粋、アベッグ変奏曲、パピヨン

  

 本日は、パウゼでもお馴染みの公開講座講師のお一人、パスカル・ドゥヴァイヨン先生をお招きし、シューマンおよび彼の初期の作品《パピヨン(蝶々)》を中心とした、公開講座が開催されました。ドゥヴァイヨン先生の深い作品への洞察を拝聴しようと、平日の開催にもかかわらず沢山のピアノ学習者やピアノ指導者の方々が集まっていました。

 最初にドゥヴァイヨン先生は、クラシック音楽の学習において作曲家のことや作曲家の生きた社会的背景を知ることの意味について説明されました。ある作曲家について学ぶということは、他者に関心を持ち、他者を賞賛するということであり、それはその人の音楽家としての人格形成にも重要な意味を持ちます。特にシューマンの場合は、彼の生涯に起こった出来事や、彼が生涯の創作活動をかけて考えたことが、様々なかたちで作品に投影されていることに加え、彼が頭の中で鳴り響いている音を楽譜をしたためきれておらず、それを奏者が読み解かなければならない場合も多くなっています。よって、彼の作品を弾きこなすには適切な学習の段取りが必要となってきます。

 シューマンの生涯や彼の作曲理念、また彼の時代を取り巻いていたロマン主義の思想についてスライドを出しながら解説した後に、ドゥヴァイヨン先生は幾つかのシューマンの作品を挙げ、彼の作品にしばしば潜んでいると言われている「暗号」や、妻でありやはり音楽家だったクララとの音楽活動について特記すべきことを紹介されました。そしていよいよ《パピヨン》の解説になります。《パピヨン》はジャン・パウルの『生意気ざかり』という文学作品の仮面舞踏会の場面にインスピレーションを得ていたと言われています。主人公の双子の兄弟ヴァルトとヴルトの存在は、後にシューマンが自らの文筆や創作で登場させる自分の分身フロレスタンとオイゼビウスを彷彿とさせます。それだけではなくこの作品は、様々な仮面舞踏会の情景を表した音楽が色とりどりに並べられているように見えて、シューマンの同時代・先代の作曲家への敬意や後の創作への着想の源が潜んでいると考えられます。ドゥヴァイヨン先生は各音楽的モチーフのシューベルトやベートーヴェンとの類似点を指摘したり、作品中に登場する舞曲の記号的な意味を丁寧に解説し、聴講者の皆さんは熱心にメモを取っていらっしゃいました。

 《パピヨン》はピアノ愛好者には広く知られているシューマンのレパートリーの1つですが、その創作背景や創作意図にはまだまだ解釈の余地がある作品です。おそらく聴講された皆さんの誰しもが、家に帰ってさっそくシューマンの楽譜を色々と見比べたいと思ったであろう、濃い内容の講座でした。

(A.T.)

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