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中井正子 “モーツァルト : 4つのソナタ と ファンタジー”
ピアノ公開講座(全3回)開催レポート
第3回 2019年 7月12日(金)10:30-12:30 
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

  中井正子先生によるピアノ公開講座「モーツァルト:4つのソナタとファンタジー」第3回目は、ピアノ初心者にもよく演奏される《ピアノソナタ ハ長調 KV330》《ピアノソナタ ヘ長調 KV332》が取り上げられました。

 まず《ピアノソナタ ハ長調 KV330》第1楽章の、第1主題の小節割りをみていきます。1小節目から18小節目までのフレージングが2、2、4、3、3、3、4となっていて弾きづらいことを例に挙げながら、小節を考えながら弾く大切さについてお話されました。装飾音の弾き方も、鳥のさえずりのような装飾音がちりばめられるモーツァルトの曲では、上からか、その音からトリルを入れる、と細かく読み進みます。また練習方法については楽章を通じて3つのアドバイスがありました。

・分散和音は和音で弾き、ハーモニーを味わってから、分散和音で弾く

・ 軽やかなスケールは、少しスタッカートをつける練習をして、その後レガートで弾く

・ スタッカートの音階は、レガートで練習してからスタッカートで弾く(86小節目など)

 次に第2楽章。冒頭の連打は弦楽器の1つの弓で弾くイメージで演奏します。F durで始まり、21小節目からf moll(同主短調)になり、緩徐楽章がこのような調の構成であることは珍しく、「シューベルト的」と言われているそう。

 終楽章はドイツ民謡のような楽想です。69小節目からの展開部ではまた別の民謡が現れ、問いと応えがなされるように演奏します。終楽章最後のポイントは169小節目。偽終止を経て、ブラボー!という声が聞こえてきそう、完全終止で曲が締めくくられます。

 続いて《ピアノソナタ ヘ長調 KV332》第1楽章第1主題はカンタービレの楽想で5小節目からは対位法的に作曲されています。23小節目からは、本来展開部で使われるような楽想が用いられファンタジーのよう。第2主題(41小節目〜)はC durで始まり、後半部分にあたる56小節目からはドラマティックで緊張感の高い楽想が現れ、オペラ風なスタイルで進みます。また84小節目からのコンチェルトのカデンツァを思わせる楽想を経て、提示部の最後はオペラブッファ的なコデッタで、展開部に移ります。オペラ風な部分がさらに華麗に展開(113小節目〜)されます。ここでは、109小節目からドラマティックな展開へ導く意識を持って弾くことが大切だとお話しされました。また、第1楽章では、一つの終止まで弾ききることで次の楽想や要素が活かされるということが、お話をうかがっている中で大事なポイントのように感じられました。

 第2楽章Adagioは「ゆるやか」に、装飾音を聴かせる音楽。8小節目からの第2主題は室内オーケストラのような弾き方で内声を意識して弾きます。

 変わって終楽章は技法的なピアノコンチェルトのよう。導入部はカデンツァのように無窮動に駆け抜けます。はっきりとした打鍵で弾くために、指をあげて弾く練習をします。15小節目から舞曲風の第1主題が始まり、37小節目から第2主題が現れます。20小節目は拍を意識して弾くことが大事です。第2主題は3、2、3の小節区切りで舞曲とコンツェルト的な楽想が移り変わり、多様な語り口が特徴的です。展開部(91小節〜)は、ソナタ形式で本来C durで書かれるところがc mollで現れます。112小節目からcapriccioの楽想、127小節目からはファンタジーの楽想で書かれています。再現部(148小節〜)で主題が再現されると200小節目から結尾部に移り、226小節目で終わることもできたはず!ですがモーツァルトは提示部で出てきた移行部(22小節〜)を用いて曲を締めくくっています。

 初心者の時に弾くだけではもったいない奥の深い作品の世界が、中井先生の講座によって読み解かれました。講座を通して、音楽を大きく捉えて弾くための弾き方や楽譜の読み方を学ぶことができたのではないでしょうか。

 全3回にわたる「モーツァルト:4つのソナタとファンタジー」は今回が最後。

 次回の中井正子先生のピアノ公開講座「シューベルト:即興曲集 全8曲」(全4回)は10月11日から開催されます。

 (W.T.)

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