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中井正子 “モーツァルト : 4つのソナタ と ファンタジー”
ピアノ公開講座(全3回)開催レポート
第2回 2019年 6月14日(金)10:30-12:30 
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 平日の午前中の開催にもかかわらず、沢山のピアノ学習者が聴講される中井正子先生の公開講座シリーズ、今年度はモーツァルトのよくコンクールや発表会で演奏される楽曲がテーマとなっています。特に本日のテーマは、かの有名な「トルコ行進曲」が終楽章にあるイ長調のピアノ・ソナタ「トルコ風」。楽曲そのものもモーツァルトの繊細な部分から大胆な部分までが楽しめる作品であるうえ、講座を聴きながら中井先生ご自身による模範演奏を聴けてしまうというのも、とても楽しみの多い公開講座でした。

 今回中井先生が講座全体を通してお話しされたのは、このピアノ・ソナタのどのような点が「トルコ風」なのかということを、音楽的な内容とモーツァルト存命当時のウィーンの状況をふまえて考えようということでした。この作品はつい終楽章の「トルコ行進曲」のみが「トルコ風」だと思われがちですが、実のところ第1楽章・第2楽章から既に「トルコ風」の音楽が随所にちりばめられています。優雅な音楽の中に登場する突然のフォルテや行進曲風の音型は、当時のウィーンの人々にとって常に彼らの東に存在する「脅威」の対象であり「滑稽さ・粗野」のイメージでもあったトルコのイメージを反映していると言えます。

 第1楽章はこちらもまたモーツァルトの楽曲の中でも非常に有名な変奏曲ですが、中井先生はまず、主題がシチリアーノあるいはパストラルの様式から来ていること、これは変奏曲でもいわゆる決まったベースのうえで即興的に展開される「職人(プロ)」向けの変奏曲様式から来ていることを理解したうえで、フレージングを念入りに計算して演奏することを強調されました。この主題は6/8拍子にのった非常にシンプルなものですが、中井先生がフレージングや音の起伏に一工夫かけるだけで、とても粋な旋律美が現れるものです。主題の演奏の仕方を決定したうえで、中井先生は次に、主題を歌いながら続く変奏を演奏してみる練習を、聴講の方々と行いました。このような練習をすることで、主題と他の変奏との間に統一性が生まれます。また、後半の変奏が華やかになってゆく部分では、オーケストラやオペラを想像して、歌い手がアリアを歌っているようなイメージやオーケストラが斉奏で登場するイメージなどを当てはめてゆくと、表現が一段と豊かになります。

 第2楽章・第3楽章で「トルコ風」のお話以外にメインのトピックとなったのが、ペダリングでした。モーツァルトの作品の場合、ペダルは単に「音を伸ばす」ことに留まらず、アクセントや旋律のニュアンスを決定づける、重要な表現になります。中井先生は曲の部分を少しずつ取り出しては、強拍にアクセント代わりにペダルをつけてほしいところ、全体に薄く細かくペダルを踏んでレガートを強調してほしいところ、など細かい指示を出し、受講されていた皆様は熱心にメモを取られていました。

 一連の講座の内容を聴いたうえで中井先生の模範演奏を聴くと、先生の音楽がいかに丁寧な音楽創りに基づいているかがよくわかります。さっそく帰宅したらモーツァルトを練習してみたくなるような、非常に充実した講座の時間でした。

(A.T.)

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