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中井正子 “モーツァルト : 4つのソナタ と ファンタジー”
ピアノ公開講座(全3回)開催レポート
第1回 2019年 5月17日(金)10:30-12:30 
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 中井正子先生によるピアノ公開講座「モーツァルト:4つのソナタとファンタジー」(全3回)」の第1回が開かれました。

 今回取り上げられたのは、ピアノソナタイ短調KV310とファンタジーニ短調385g(KV397)です。

 モーツァルトの数少ない短調作品であるソナタイ短調KV310は、他のピアノソナタと異なり、家庭で楽しむアマチュア向けの作品ではありません。モーツァルトのお母さんが亡くなった前後に書かれていて、ドラマティックな作品でもあります。

 第1楽章から見ていきます。

 出だしはのリズムはファンファーレ、尊厳を表しています。この右手の装飾音は強調したい部分で、言わば演歌のこぶしのようなもの。ロマン派作品ではないので拍の頭で合わせるようにします。付点音符は甘くなったりしないよう、左手の八分音符と合わせながら練習します。第5小節〜第7小節の重音は大切に。

 第20小節の左手リズムもファンファーレです。第23小節からの十六分音符の連なりは、ハーモニーを感じて。第28小節からの左手は係留音→解決となっています。

 第42小節等に装飾音がありますが、装飾音は、この音からでも上からでもどちらから入れても良く、幾つ入れても良いのですが、綺麗に入れることが大事です。

 第45小節からの付点音符は、左手の十六分音符と綺麗にハマるように気をつけます。

 第50小節からは展開部です。第57小節からファンファーレのリズムが続き、半音も続き、不安が募る表現となっています。第61小節から第62小節でffからppとなり、また第66小節でffとなりますが、これはダイナミクスの変化の強調です。モーツァルトの時代のピアノは現代ピアノほど鳴らないので普段はダイナミクスをやりすぎないほうがいいのですが、このような表記がある時は強調します。第69小節からは音楽が動きます。

 第80小節で再現部に戻ります。第94小節からのぶつかる半音に気をつけます。第109小節の左手和音はナポリの六です。右手の十六分音符で描かれる和声も意識します。

 第125小節から第129小節に飛ばしても音楽は成り立つのに敢えて入る3小節間は、減七の和音で、言わば電撃的なショックの役目があリます。

 第2楽章の冒頭に指示にあるAndanteは、あまり遅くなくという意味です。

 冒頭右手の音階は上がっていくのでほんの少しクレッシェンドとなります。第3小節のクレッシェンドは、左手の持っていき方も気をつけます。第4小節の右手上行音階にスラーとスタカートがついていますが、一音ずつニュアンスを感じて、切りすぎないように。音階部分はまずスラーで練習するようにします。第8小節の最後の右手のように同一の音が続く時は、指を変えると音のニュアンスも変わります。

 第22小節の音型はまさに情緒と一致すると考えてください。

 第37小節は長調から短調へ。第38小節はため息の表現です。第43小節からの右手の三連符は係留音→解決となっています。第51小節から第53小節にかけては属調、第54小節で解決します。

 第3楽章の冒頭からの両手の形ですが、右手の拍をしっかり取ると左手も入りやすくなります。

 第37小節、左手が飛びますが意識して。第64小節は属調のemollになります。左手の拍を感じて練習します。第99小節から第106小節は一つの塊として見るようにします。

 第143小節からのAdurの部分はハーフタッチでどこかで鳴っているというように感じて弾きます。

 最後の第245小節からは右手と左手の模倣となります。

 ファンタジーニ短調385g(KV397)。即興のような体裁の曲です。冒頭、何かを探すように、調子を整えていく感じで始めます。ペダルは使いすぎないようにします。

 この曲はオペラのような感じの部分が散見されますが、第16小節はまさにオペラ風にドラマティックになります。第34小節では突然技術的なパッセージとなります。第35小節は第20小節と同じ形の繰り返しです。第44小節は再び見せどころのパッセージです。第51小節の右手が6度飛びますが、こういうところは意識して丁寧に。

 第55小節からの後半はガラッと変わります。

 第98小節からはモーツァルト本人が書いていません。なぜこのままにしたのかはわかりませんが、これでは終わらないので他の人がつけ加えました。

 モーツァルトのペダルについては、バロックでもロマン派でもないことを念頭に置くようにします。バロックはペダルを踏まないのが前提、ロマン派では充分にペダルを踏みますが、モーツァルトはその中間です。つまり、ペダルを踏んでも良いけれど、スケール部分は踏まない、休符の部分は上げて、濁らないように。踏んでから少しずつ上げていく等のテクニックが必要で、耳でよく聴いて踏むようにします。

 細部にわたっての中井先生の曲の解釈と演奏上のアドバイスは、いつもながらの情熱あふれるものでした。

 第2回は6月14日(金)で、ピアノソナタイ長調KV331『トルコ行進曲付き』が取り上げられます。

(K.A)

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