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現代ピアノの為の演奏技術講座 開催レポート
〜入門からヴィルトゥオーゾ・テクニックに至るまで〜
講師: 高田 匡隆
第5回 2018年6月29日(金)10:30〜12:30 
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 高田匡隆先生による「現代ピアノの為の演奏技術講座」、第5回は、リストの〈ダンテを読んで〜ソナタ風幻想曲〜〉がテーマです。

 講座のはじめに、先生は楽譜から表現を読み取り、演奏に結びつけることの重要性を強調されていました。リストの楽曲は、それを実践することで特に効果が生まれる。そして逆に、楽譜に書かれていないことを実践してしまったり、独断的な考え方や弾きやすさのみに頼って弾いてしまうと良くない結果が出てしまう――先生のこのようなご指摘は、リストに魅力を感じ、憧れているアマチュアピアニストと教師にとっては重要なアドバイスであり、箴言であると言えるでしょう。

 先生は楽曲そのものに立ち入る前に、まず〈ダンテを読んで〉というタイトルに注目され、その意味と楽曲とのつながりを指摘されました。ダンテは詩人の名前ですが、ここでリストは彼の長編詩『神曲』のあらすじに沿いつつ、インスピレーションを受けながらこの曲を作曲したのです。ここで先生によって指摘された登場人物は、楽曲を解釈して表現していく上で、非常に重要な意味を持つものだということが、その後のお話からよくわかりました。

 〈ダンテを読んで〉はソナタ風の幻想曲で、4つの部分に分かれていますが、先生はそれぞれの部分を演奏され、その後で、その部分で重要な技巧や表現方法について、事細かにご説明されました。また、その際に、「なぜこのような技巧を用いるのか、なぜこのように表現するのか」も説明してくださり、説得力がありました。その中で興味深かったのは、4つの部分それぞれにある、リストによる『神曲』の筋や場面の表現です。また、楽語の意味を楽語事典だけではなく、イタリア語辞典にあるもともとの意味を調べてみてほしい、そうすることでこれまでとは違う表現が生まれる、という提言には気付かされるものがありました。

 今回の講座に通底したテーマは、「技巧のために技巧があるのではなく、表現のために技巧がある」ということだったように思われます。「テクニックだけで弾こうとするのではなく、音楽の表現がテクニックを助けてくれる」。講座終盤の先生の一言に、それが集約されていました。難曲として広く知られ、逆に「超絶技巧」というイメージが根付いてしまったリストの大曲をあえて扱われることで、先生のそのテーマはさらに印象に残るものになっていたと思われます。楽曲の細部で必要とされる表現がまず前提として存在する、そしてそれを様々な方法で楽譜から読み取る、そうした上で、あるべき技巧を求めていく、というプロセスによる先生のご説明は、とておわかりやすいものでした。

 オーケストラを一人で操るもの、と言われるほど幅広い音域と表現を有するピアノという楽器。ヴィルトゥオーゾ・ピアニストには、その力を十分に引き出すべく、技巧のみならず、知性、感性、音色への意識・耳が求められるのだ、ということが改めてよくわかる二時間でした。

(A.Y)

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