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中井正子“ドビュッシー没後100年記念”
ピアノ作品全曲公開講座(全10回)開催レポート
第6回 2018年 7月13日(金)10:30-12:30
♪「アラベスク・ベルガマスク組曲」
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 中井正子先生による「“ドビュッシー没後100年記念”ピアノ作品全曲公開講座(全10回)」の第6回が開かれました。

 今回取り上げられたのは『アラベスク・ベルガマスク組曲』。共に、ドビュッシーの初期のピアノ作品の代表作として知られています。

 「アラベスク第1番」。楽譜を見ると、唐草模様のように書かれた音符の連なりが見えますが、これがまさに「アラベスク」、アラビア風装飾模様のことです。

 出だしから、ハーフタッチを使います。ハーフタッチはグランドピアノでできるタッチで、ゆっくり鍵盤を押して途中で止まるところまで押せば音が出ますが、この軽いタッチのことです。柔らかい響きが出ます。3〜4小節では外声部を普通のタッチで、内声部をハーフタッチで弾いて、立体的に響かせるように。6小節からは弱音ペダルを使います。10小節では前のcisの響きを少し残したまま少しペダルを上げて踏み替えます。17小節からの右手の二分音符は響かせます。22〜26小節等、よくテンポが変化しますが、指示通りに弾きます。ソルフェージュの得意だったドビュッシーは、テンポやニュアンスも正確に書いたので、それを活かします。26小節の右手cisは指替えです。指替えはドビュッシーではよく出てきますが、慣れるとより楽に弾けるようになります。中間部の39小節ではTempo rubatoが出てきますが、フランス語で「少し遅めに」という補足が書か れているので、前より少し遅めに弾きます。ドビュッシーのスタイルから外れないよう、適度な自由さを保ちます。63小節はRisoluto、しっかり弾きます。70小節では全体がdim.ですが、ソプラノのみ少しクレッシェンドが付いています。ただし、やり過ぎないように。76小節からの八分音符と三連符は、雰囲気で弾いてしまわないようまずしっかり合わせる練習をします。95小節の全音符から始まるa、gis、fis、eは、軸となる音です。107小節、終わりの音は、押さえつけないように。しっかり聴いてペダルで調整して響かせます。

 「アラベスク第2番」。この曲は、アラベスクの意味である唐草模様が、装飾音として特徴をなしています。冒頭から、右手は装飾音として書かれているのです。中間部を挟んで、冒頭と似たフレーズに戻る62小節〜を見ると、こちらは装飾音が付いたり付かなかったりもしています。32小節からの中間部は、スタッカートやスラーの細かな指示がありますが、しっかり弾き分けます。52〜53小節と56〜57小節のスラーや、104〜110小節のアクセント、強弱などもそうです。

 「ベルガマスク組曲」より「プレリュード」。プレリュードとは本来指ならし的な役割を持っており、もともと即興的な音楽です。冒頭2小節2拍目、日本で出版されている楽譜では実用版全集の底本の初版の間違いのB音のままになっているものがありますが、これはA音です。実用版全集は訂正されています。出だしのfは響かせます。20小節では三十二分音符が出てきて、装飾的な細かい音符としての役割をしています。クラヴサンの伝統的な書き方であり、アールヌーボーの装飾的なデザインの葉にも使われています。44小節からデュナミークが変化しますが、48小節のmeno pは、 46〜47小節のpよりは強くなるということです。52小節では全体でmf、左手の八分音符はp、と細かく弾き分けます。Aに戻る前の65小節のトリルは少したっぷり取って盛り上げます。81小節では、指替えして、音を維持するようにします。

 「メヌエット」。冒頭から始まるスタッカートで弾く音は、リュートをイメージしていますが、メロディーが内声に組み込まれています。12小節の内声を見るとメロディーがわかりますが、舞曲のイメージを壊さないよう3拍子を感じて弾きます。18小節ではトランペットなどのファンファーレが遠くから聞こえてくるイメージ、そして22小節で主題に関係なく発展していくファンタジーの部分になります。32小節からは倍音をよく聴いてペダルを調整します。73小節からは再現のAですが、a mollからEs durという遠い調に戻っています。これは ドビュッシーが耳の優れた人であったので、違和感なく聞こえていたということなのでしょう。87小節のf音はfis音で弾く場合もあります。

 「月の光」。実はサラバンドという3拍子で2拍目に重みのある舞曲風に書かれていますので、2拍目に重みを感じて弾きます。14小節まで1拍目がタイになっていますが、三連符のリズムが狂わないように。1小節からウナコルダの指示がありますが、よく聴いて時にはペダルを上げたりして調整します。15小節のTempo rubatoは、極端なテンポの変化は避けます。27小節 からはUn poco mossoで少しテンポが速くなりますが、これまでの八分音符が十六分音符になるので自然にテンポが速くなったように聞こえます。その後37小節でEn animant、43小節でCalmatoとテンポが変化し て、51小節でa Tempo 1で最初のテンポに戻ります。左手の1拍目だけ十六分音符のアルペジオになりますが、テヌートの付いているバス音を聴きながらハーフタッチで弾きます。59小節のces音は重要な音です。押さえつけず、響かせます。コーダのアルペジオは下から上へ繋ぎます。

 「パスピエ」。最初は優雅な踊りであるパヴァーヌと名づけられましたが、最終的にパスピエという題名になりました。しばしば速すぎる演奏を耳にしますが、2分の2拍子でなく4分の4拍子であることからも、速いテンポの曲ではないことがわかります。5小節では教会旋法風の音形が使われ、古風な歌いまわしとなっています。43小節のcedezは緩むという意味で、このcedez un peuは少し遅くしま す。中間部では、リュートの伴奏と共にトランペットとオーボエが聞こえてくるようです。そしてA durからAs durへ転調しますが、ドビュッシーは遠くへの転調をよく使って いました。そして中間部の最初に戻り、A durだったものがE durとなって戻ってきます。106小節で冒頭部分に戻ります。左右が交代して再現され、125小節で中間部のモチーフが出てきて、138小節で最初の音形が戻ります。147小節からはコーダ、最初のモチーフの拡大形が左手に現れ、右手には旋法風のdis音が出てきます。

 次回の9月14日(金)は、「小品集1・小品集2」が取り上げられます。

(K.A)

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