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中井正子“ドビュッシー没後100年記念”
ピアノ作品全曲公開講座(全10回)開催レポート
第4回 2018年 4月20日(金)10:30-12:30 
♪「子供の領分」
s会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 中井正子先生による「“ドビュッシー没後100年記念”ピアノ作品全曲公開講座(全10回)」の第5回が開かれました。

 今回取り上げられたのは『子供の領分』。

 ドビュッシーが娘のシュウシュウの3歳の誕生日に贈るために作曲した、6曲からなる小組曲です。ドビュッシー自身が娘のために楽譜の表紙をデザインしたこと、また、全曲に英語のタイトルが付いていて英国かぶれの面が見えること等、少し特殊な作品集とも言えるとのことです。シュウシュウの母であるエンマやその娘ドリー、そのドリーと交流があったことなども、中井先生はお話しくださいました。

 「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」。クレメンティの練習曲集のタイトルに「博士」とつけて、パロディーにした曲です。「音の粒をそろえて、そっけなくならずに」との指示は、一つ一つの音にニュアンスがあるということ。冒頭から2小節ずつ上声部に少し変化がありますが、その違いを意識して弾くようにします。ドビュッシーの指示に忠実に演奏するだけで「音楽」になるのです。第22小節からは音形が展開します。第24小節のテヌートは、押さえつけないようにする方が、響きます。第33小節は冒頭の音形が倍の長さになったもの。子供が練習に疲れてあくびかため息しているかのようです。第37小節はハ長調から変ニ長調へと、遠い調へ行っていますが、ドビュッシーは耳が良かったので、遠くの倍音がよく聞こえたためだろうということです。第67小節からはコーダの役割となります。左手のテヌートアクセントに違いに気をつけて弾きます。

 「象の子守歌」。「象」とは、シュウシュウが持っていたぬいぐるみです。「少しぎこちなく」とある指示は、子供の像がぎこちなく歩いているのを表現しているのです。第9小節に「les 2 Ped.」の指示がありますが、 これはダンパーペダルと弱音ペダルの両方を同時に踏みます。ドビュッシーの作品では時にフォルテの時にも「les 2 Ped.」の指示が書かれている場合がありますが、音色に変化をつけ るためだそうです。第59小節は、Es、B、Esの和音を音を鳴らさずに押さえなおして、響きを保つようにします。

 「人形へのセレナード」。この曲だけが、全曲完成の1908年に先立って1906年に書かれています。「現代ピアノ教本」のための委嘱作品として書かれました。特徴的なのは、最初から最後まで弱音ペダルを踏みっぱなしにすることですが、ベールのかかったような音色にするため。子供の想像の世界を表しているとのことです。冒頭の5度の音形はギターの音を表しているようです。第14小節から別のモチーフが出てきますが、この伴奏の音形もギターのようです。ラヴェルの「道化師の朝の歌」とも少し似ています。第43小節からは別のモチーフが出てきますが、伴奏の音形が狭くなってきています。そして第66小節あたりからは、伴奏はバンジョーのようになり、それまでのセレナードがラグタイムのような音楽に変わります。第107小節からはコーダで初めのモチーフが出てきますが、スタッカートが四分音符に付くか八分音符に付くかで違いがありますから、気をつけて弾きます。

 「雪は踊っている」。冒頭に「やわらかく、ぼかして」と指示されていますが、同じ音形の繰り返しが連なり、雪が降っている情景を表しているようです。第34小節から2種類メロディーが出てきます。第49小節で音形が変化しトッカータのように激しくなり、第57小節で再現部になり、第7小節以降の音形になります。最後は、つい遅くしたくなるのですが、ドビュッシーはわざわざ「遅くしない」と指示しています。ドビュッシーは、曲の終わりで遅くなるのを嫌がったのだそうです。

 「小さな羊飼い」。牧笛のようなメロディーと踊りのモチーフの、2つの要素が繰り返されてできている曲です。3回繰り返した後、第27小節では活気のあるモチーフになります。今回はこれまでと違い、最後は少し遅くなります。第10小節や最後に出てくる和音は、1拍ずらすことで響きの効果を狙っているとのことです。

 「ゴリウォーグのケークウォーク」。作曲当時から人気がある曲で、楽譜もたくさん売れたとのこと。「ゴリウォーグ」とは、当時流行していて誰もが持っていた黒人の人形のキャラクターの名前で、シュウシュウも持っていたそうです。ドビュッシーはしばしばラグタイム風の音楽を書いていますが、「ケークウォーク」とは当時アメリカの黒人がラグタイムの音楽に付けていた踊りのこと。ゴリウォーグ人形が踊るケークウォークをイメージして書かれました。ジャズ風のリズムとアクセントが特徴的で、種類の異なるアクセントが書き分けられていますから、気をつけて弾きます。第47小節からは小編成のジャズバンド風になります。第61〜63小節には、当時よく知られていたワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」のモチーフが出てきて、第63〜64小節でその重厚なモチーフをからかうかのような音形が続きます。ドイツ人の重厚な音楽をドビュッシーがユーモアでからかったというところなのだそうです。そしてまたラグタイム、ジャズバンド、ラグタイム、と続きます。

 次回の5月18日(金)は、「前奏曲集第1巻・第2巻」が取り上げられます。

                                         (K.A)

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