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中井正子“ドビュッシー没後100年記念”
ピアノ作品全曲公開講座(全10回)開催レポート
第3回 2018年 3月9日(金)10:30-12:30 
♪「版画」
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 ドビュッシーのピアノ作品全曲の演奏、録音、楽譜校訂を完遂された中井正子先生をお迎えし、「ドビュッシー没後100年記念 ピアノ作品全曲公開講座」の第3回目が開催されました。今回は、東洋的な響きの「塔」、スペインのハバネラのリズムが刻まれた「グラナダの夕べ」、作曲家の母国フランスの童謡が組み込まれた「雨の庭」の三曲から成る《版画》が題材として選ばれました。

 「塔」では、民族音楽に起因するペンタトニック(1オクターヴの中に五つの音を含む音階)やヘテロフォニー(複数の奏者が同一旋律を演奏するときに装飾や変形によって音程やリズムにずれが生じた状態)といった理論がピアノ曲に反映されていることを学びました。特に「塔」で中井先生が注目されたのはペダルの踏み方でした。ドビュッシーの音楽の醍醐味である美しい音の移り変わりを破壊させないようなペダルの踏み加減を実演してくださいました。

 「グラナダの夕暮れ」では断片的な構造を丁寧に分析されました。作曲家は同じモチーフを曲のあちこちに再現させる手法をしばしば用いますが、「グラナダの夕べ」には最初の提示とは微妙に変化させたモチーフが出現しています。こうしたドビュッシーの不完全な再現を、人間が出来事を思い出すときに少し忘れてぼんやりしてしまうことへ連想させた中井先生の解釈によって、異質な雰囲気をまとう音楽を理解することへの糸口を得たように思いました。

 「雨の庭」では描写的な印象を大切になさっていました。風が吹いて砂が巻き上がったり、一瞬雨が静まったり、急に雨脚が強くなってきたり、稲妻に打たれたりなどの様々な庭の情景を表現するためには、テンポと音量に気を配ることが肝心です。音楽の豊かな表情を作り上げるためには、きめ細やかな作品への理解が大切であることを実感いたしました。最後に中井先生は《版画》に関連した風景をスライドに映され、作曲家がどのようなインスピレーションを受けてこの作品を着想したのか具体的に示してくださいました。

(M.S)

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