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中井正子“ドビュッシー没後100年記念”
ピアノ作品全曲公開講座(全10回)開催レポート
第2回 2018年 2月16日(金)10:30-12:30 
♪「小品集1・小品集2」 Vol.1
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 本日はピアノの演奏・指導の両方でご活躍中の、中井正子先生をお迎えして、ドビュッシーの小品についての公開講座を開催いたしました。中井先生はハンナ社から出版されているドビュッシーのピアノ曲全集の校訂をされており、来る6月には全曲演奏会もされます。今回の講座も、平日朝の開催にもかかわらず、中井先生のお弟子さんと思しき方々から6月の全曲演奏会を楽しみにされているお客さんまで、たくさんの方が集まりました。

 本日のテーマであるドビュッシーのピアノ小品ですが、一言に小品と言っても各曲の成立年代は様々です。中井先生の校訂された全集でも、小品は第2巻と第12巻に分かれ、第2巻は初期の作品、第12巻は晩年の作品が収められています。ドビュッシーはまさに19世紀から20世紀への過渡期を生き、後半生では第一次世界大戦も経験するのですが、彼の作風は初期と後期で様々な変化が見られます。特に小品については、比較的キャッチーな旋律の多い初期の作品がしばしば好まれるのですが、晩年の作風のものにも取り組んで初めて、ドビュッシーの音楽の全体像が理解できる、と中井先生も初めに仰っていました。

 本日の講座では、第2巻から《マズルカ》《夢》《ロマンティックなワルツ》の3曲、第12巻から《ハイドン讃》《レントより遅く》《傷病兵の衣》の計6曲が採り上げられました。第2巻の3曲では、ドビュッシー作品をどう弾きこなすかの基本を中心としたお話となりました。例えば《マズルカ》では、楽譜の音価の違いで表されたルバートを的確に演奏に反映すること、「ピウ・ピアノ」「メノ・ピアノ」といった強弱記号の細やかな指示に従って演奏を仕上げることを、中井先生は強調されました。また《夢》では、ハーフペダルを活用することで、ドビュッシーの楽譜にはしばしば現れる両手だけでは不可能な音響を再現できること、《ロマンティックなワルツ》では楽譜に書かれたテヌートを忠実に守ることによって、この作品に特徴的な民族音楽調の雰囲気を出せることなどを、お話されました。

 第12巻から採り上げられた3曲は、驚くことに、いずれもタイトルには明記されていないにもかかわらず、ワルツのスタイルで書かれています。中井先生は、ドビュッシーの3拍子の楽曲はしばしば、特定の舞踊の名前がついていないかぎりはワルツであり、しかしながら《レントより遅く》はイギリス風のゆったりしたワルツ、《傷病兵の衣》はベル・エポック風のワルツであるなど、楽曲によってモデルが違うことをお話されました。またハイドン没後100年を記念して書かれた《ハイドン讃》では、ハイドンの名前の綴りが楽曲のモチーフになっている仕組みもお話くださいました。

 ドビュッシーの小品は美しいながらも、なかなかまとめて採り上げられることのない作品なので、本日の講座を通じて素敵な曲に出会ったというお客様も多かったのではないでしょうか。次回の講座も楽しみになる2時間でした。

(A.T.)

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