トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > > 中井正子 ピアノ公開講座 > 開催レポート

中井正子“ドビュッシー没後100年記念”
ピアノ作品全曲公開講座(全10回)開催レポート
第1回 2018年 1月19日(金)10:30-12:30 
♪「映像 第1集・第2集」
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 中井正子先生による「“ドビュッシー没後100年記念”ピアノ作品全曲公開講座(全10回)」の第1回が開かれました。

 今回取り上げられたのは『映像 第1集、第2集』。ドビュッシーの作品のうちでも、最も難しく芸術的な作品集とのことです。

 「水の反映」。水面の変化をイメージして書かれています。全音音階の組み合わせで始まるこの曲は「Tempo rubato」と書かれていますが、全く自由なテンポにして良いわけでなく、小節の中で少し伸び縮みするのが良いとのこと。第16小節では五音音階になるなど、ドビュッシーが書き分けたハーモニーの違いを捉え、弾き分けていくのが醍醐味となります。また、タイがあって音楽が止まるような箇所では、必ず拍を数えるようにし、「なんとなくやり過ごす」ということがないようにします。

 「ラモーを讃えて」。旋法を使って書かれた作品です。「サラバンド風に、しかし厳格でなく」と書かれています。サラバンド風なので2拍目に重みが少し出るようにします。冒頭はラの旋法で始まりますが、第10小節ではミの旋法になることで、ドミナントのように聞こえます。この曲はバスの響きが重要で、第31小節からのgis音の続くところなど、バスが消えないよう、ハーフペダルを使います。第49小節の増4度の音の移り変わりなど、バスをよく聴くことが重要とのことです。

 「運動」。トッカータ風です。鐘の音が重なっているイメージで書かれています。完全5度で始まりますが、手の形を少し固めて弾きます。第6小節や第8小節の最後の拍は、倍音の構成音に近い響きを残すようハーフペダルを使うとのこと。第63小節のfis音とg音、第67小節の完全5度と減5度の組み合わせなど、特徴的な響きです。第89小節からのバスのfis音は響きを残して弾きます。第160小節ではバスはcis音へ、そしてc音へと変わりますが、倍音が鳴るよう響かせます。

 「葉ずえを渡る鐘の音」。この曲は、それぞれの役割を示すために2段でなく3段で書かれています。それを汲んで色々な音色を弾き分けます。冒頭から第9小節まで全音音階です。第13小節からの五連符はd音とcis音が聞こえてくるよう響きに注意します。第40小節からはコーダ。第49小節のバスがg音で終わりますが、冒頭のg音に戻ったのです。このg音と同時に鳴るcis音の響きを大事にします。

 「そして月は廃寺に降りる」。東洋をモチーフにして書かれた曲です。冒頭の和音は縦の完全4度と長2度で色付けされています。冒頭のA、第6小節がB、第12小節がC、第16小節がD……というように細かく変化して行きます。第19小節のCedezは緩む感じを出します。第20小節はB、第25小節はCと続き、第31小節はEとなりますが、ここではCの旋律とAの長2度の両方が含まれています。第35小節はD、第39小節はBと続きます。第53小節のCでは、第54小節のタイで連なる音を意識して、c音を響かせるようにします。この曲はp、pp、pppと出てきますが、それぞれ弾き分けるのが大事とのこと。

 「金色の魚」。先生もご覧になったという、おそらく中国のお盆をモチーフに書かれた曲です。池のさざ波を音形の変化で表しています。冒頭ではまだ池は静かです。右手のaisと左手のgisisを響かせるように弾きます。音形は第7小節、第8小節、第9小節……と変化をしつつ、第22小節では冒頭の音形に戻ります。第30小節は魚が跳ねるイメージとなります。第38小節では、各音に付いているテヌートやスタッカート等を弾き分けるのが大事です。第46小節では魚はいよいよ活発に泳いだり跳ねたりしているイメージです。コーダとなる第94小節はカデンツァ的に表現します。

 微妙な色合いをドビュッシーは書き分けていますから、それを聴き取り、弾き分けるのが、ドビュッシー作品に取り組む魅力。全曲じっくり見ていくことでドビュッシー作品の全体像が見えてくるので、ぜひ第2回以降の講座も受けたいものです。

 次回の2月16日(金)は、「小品集1、小品集2」が取り上げられます。

(K.A)

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > > 中井正子 ピアノ公開講座 > 開催レポート