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中井正子 ピアノ公開講座
『 J.S.バッハ:シンフォニア』〜分析と演奏の手引き〜(全5回)
第5回 2017年 10月13日(金)10:30-12:30  
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 10月13日表参道パウゼにて、ピアニスト中井正子先生による公開講座『J.S.バッハ:シンフォニア〜分析と演奏の手引き〜』が開催されました。講座の最後となる第5回目の今回は、第13番イ短調、第14番変ロ長調、第15番ロ短調を取り上げ、前回までと同様にテキストの内容を読み解きながら分析をした後に、演奏のアドバイスをしてくださいました。

 まずは前回の復習として、第10番と第11番が調性だけでなく曲の性格が対比されているということ、また今回取り上げた第12番と第13番も同じように書かれていることを確認し、講座が始まりました。

 第13番は第12番と、主題の結尾動機が応答主題の対声部の一部に用いられているところにおいて似た手法が用いられています。第11番と同様に8分の3拍子ですが、第11番は和声的技法が主に用いられているのに対し、第13番は複雑な対位法が用いられていることが決定的な違いであると解説してくださいました。間奏部分は主題提示部にもっていくためのつなぎであり、そこへどのように導くのかを考えることが大切であること、またピアノは弾くと音が減衰していく楽器であり、音を伸ばしているようにするためには他声部とのバランスを意識することをアドバイスしてくださいました。

 第14番は構成的には自由である一方で変応を伴うフーガ的な主題応答がみられる曲であり、特にストレッタ技法の学習ができる難曲です。徐々に間隔を短くしてあらわれる動機が緊張感を作り出し、切迫感を増していきます。演奏する上では、声部を目立たせようとして強く弾こうとするのではなく、他の声部を聴くことが大事であるとご指導くださいました。また主題を弾く際に最後まで聴いて弾ききることをポイントとしてあげられました。

 最後の第15番はインヴェンションと同様にカプリッチョの曲で、ジーグ調の9拍子でありながらラモーやクープランを思わせるような自由な動機と、分散和音の荒々しいパッセージが特徴な曲とご説明くださいました。主題はマルテラートによる反復音と分散和音で成り立っており、対主題による掛け合いや、モティーフの反行形などがあらわれ曲は進んでいきます。32小節目(フェルマータ)について、和音の解決を導く左手の音を大切に弾くこと、また右手は何かしらの装飾があったと考えられており、(装飾をつけないにしても)そのことを意識して弾くことを演奏上のポイントとして挙げられました。

 分析はただ単に解釈して弾くためのものではなく演奏に活かすためにするものであり、曲を理解していればおのずと演奏にあらわれるとお話くださいました。「バッハの作品の入り口となるインヴェンションとシンフォニアを学ぶことで、そこから先の作品もおもしろくなってくるのではないでしょうか」とコメントされ講座を締めくくられました。曲そのものを読み解くだけでなく、曲集を構成する曲同士の対比なども知ることができ、とても学びの多い講座でした。

(W.T)

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