トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > 中井正子 ピアノ公開講座 > 開催レポート

中井正子 ピアノ公開講座
『 J.S.バッハ:シンフォニア』〜分析と演奏の手引き〜(全5回)
第4回 2017年 9月15日(金)10:30-12:30  
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 9月15日パウゼにて、ピアニスト中井正子先生による大人気の公開講座『バッハシンフォニア 分析と演奏の手引き』の第4回目が開催されました。今回は、第10番ト長調、第11番ト短調、第12番イ長調を中心に、使用テキストの文章を丁寧に読み解きながら分析をした後に、演奏のアドバイスをしてくださいました

 まず、第10番と第11番は、調性ばかりでなく曲の書かれ方や性格も対比していることを述べられ2曲を続けて弾いてくださり、曲ごとの解説が始まりました。

 第10番は、主に主題全体か主題後半の音型の反復によって曲全体が作られています。ここでは、各提示部での主題の発展や変型の仕方、第6小節目の上2声の音型をもとに作られた間奏で転回対位法などを用いていることなどを中心に解説されました。演奏については、まず、チェンバロのイメージを持ってバロック的に弾く方法として、タッチは指先を卵のように丸めタカタカと弾くことや、ペダルは音をつなぐための補助として用いることなどを伝授されました。続いて、1拍目を常に感じること(冒頭の裏拍から始まる主題など)、それぞれの声部で音色やタッチのバランスを考えて弾くこと(2つの声部で、音の高さが交差する時やタイで音が伸ばされている時に他の声部でその音を弾くときなど)を主にアドバイスされました。

 第11番では、明るくフーガ的な第10番と対照的に、和声的でキャラクターピースのような作風で、韻をふむように曲が進んでいきます。1小節ごとの主要動機の模倣とそれをつなぐ繋留音、24〜27小節目と57〜62小節目のバスに登場する保続音を大切に弾くことや、フレーズの取り方を解説されました。フレーズの表現については、主要動機を1つ1つ弾くと思わずに、終止句までの大きな纏まりとして捉えます。そして強弱をつけるときは、フレーズの流れを見て、主要動機ごとに段階を踏むようにつけると良いとのことでした。

 第12番は、次回に取り上げられる第13番イ短調と対になっています。この曲も前述の第10番と同じくフーガ的に書かれています。大きく以下の3つの特徴があります。(1)オルガン的書法(冒頭バス声部のオルガンスタッカート、終止句の保続音、最後に現れるバス・ソロ的な旋律など)。(2)主題と応答の後にコーダのような動機が付いている。(3)間奏は主題前半と後半の動機をもとに作られており、転回対位法で書かれている(上2声は配置が入れ替わり、バス声部は旋律の向きが転回されている)。(1)については、オルガンスタッカートは音が短くなりすぎないようにレガートから次第に音を切っていくこと、保続音やバス・ソロを大切に弾くことなどを。(2)と(3)については、声部の違いが弾き分けられるように、1声部だけでなく2声部での組み合わせも練習すること(5小節目の上2声など)、間奏のバスの音型は手首を少し横に振ると弾きやすいことなどを。各特徴に沿って弾き方を細やかに教えてくださいました。

 ピアノ学習者にとってお馴染みの《シンフォニア》ですが、コンパクトでありながらも音楽的に非常に高度な事柄を学べるように工夫が凝らされて作曲されていることがわかり、目から鱗の2時間でした。次回はいよいよ最終回です。10月13日(金)に開催予定で、第13番イ短調、第14番変ロ長調、15番ロ短調を取り上げられます。

(K.S.)

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > 中井正子 ピアノ公開講座 > 開催レポート