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中井正子 ピアノ公開講座
『 J.S.バッハ:シンフォニア』〜分析と演奏の手引き〜(全5回)
第3回 2017年 7月14日(金)10:30-12:30  
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

   

 7月14日パウゼにて、ピアニスト中井正子先生による公開講座『J.S.バッハ:シンフォニア〜分析と演奏の手引き〜』の第3回が開催されました。今回は、第7番ホ短調、第8番ヘ長調、第9番へ短調をテーマに、使用テキストの分析内容を先生が実演を交えながら詳しく解説された後、講座でしか聞けないような演奏のアドバイスをしてくださり、大変貴重なひとときとなりました。このスペースでは、演奏のアドバイスを中心に一部ご紹介させていただきます。

 まず、今回の3曲で一貫して述べられていたことは以下の2点です。

(1)主題以外の対旋律や重要な音型など、分析の内容を意識して全てを音に出しすぎないように弾くこと。(演奏者が分析の内容を理解していると、おのずと音が変わるため)また、間奏の部分は次へ繋ぐように軽めに弾くこと。

(2)冒頭の左手1拍目の音は拍の重みを感じるように弾き、3曲ともに右手がすべて8分休符からの開始であるため、休符後の音が大きくならないように弾くこと。

 次に、曲ごとの内容をご紹介させていただきます。

 第7番では、シンフォニアの全般で見られるシンメトリカルな構成ではなく、4つの部分で構成され、主題提示や調性関係などが他の曲に比べて比較的自由に書かれています。演奏のアドバイスとしては、まず、主題や対旋律の性格からオルガン的なレガートを弾くことを述べられ、手に重みをかけて弾く方法を伝授されました。ただし、無理に力を入れるのではなく、手に自然と腕がついてくるように良い音がする方向へ力を動かすように弾くことがポイントとなります。また、タイでのばされた音を弾くときは、タイで繋がれた音まで聞くこと。ペダルは音を繋ぐために用い、次の音と響きが重なって濁らないように注意することもアドバイスされました。

 第8番は、前述の第7番とは対照的にシンメトリカルな構成で、かつ厳格な対位法で書かれています。ここでは、主題に登場するトリルが入りにくい時は、「3232」などの同じ指使いを使わずに「3243」や「5354」などに変えて弾くと入りやすくなること。ストレッタの部分はどこから始まっているかわかるように主題と応答を理解した上で弾くこと。また、この曲の間奏では主題の音型をリズム的に用いているため、リズムを楽しみながら弾きます。ただし、3声全てが同じ声部に聴こえないように、声部ごとに音色を使い分けることが大切になります。

 最後は第9番です。この曲は第3番の時と同じく転回対位法で書かれているため、バランスを考え3つの主題をどのように引き分けるかがポイントになります。また、悲しみ、苦しみ、恐れなどの意味を表す音楽修辞から、「ため息の音型(主題2)」、「半音階下降(主題1)」、「誤った音程関係(対斜や増・減音程など)」が意図的に用いられています。例えば、「ため息の音型」では8分休符を大切に扱うことなど、それぞれの修辞的音型のキャラクターをしっかりと掴んで弾くことも大切です。なお、この曲のテンポは、8分休符が上手にとれるテンポが良いとのことでした。

 細やかで明快なレクチャーが展開された充実した2時間でした。先生は「曲の構造などがわかると、おのずと表現の仕方がわかってくるので、どんどん楽しくなると思います。」とコメントされ講座を締めくくられました。次回は9月15日(金)に開催予定で、第10番ト長調、第11番ト短調、第12番イ長調を解説してくださいます。今から非常に楽しみです。

(K.S.)

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