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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲 公開講座&全曲演奏会 第8回
開催レポート
〜若き巨匠、松本和将氏による ピアノ・ソナタ全32曲講座&演奏シリーズついに最終回!〜
◆公開講座

2017 年
4月7日(金) 10:30〜12:30 
会 場/
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
♪ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109、第31番 変イ長調 作品110

 

 2014年からパウゼで連続開催している、ピアニスト松本和将先生によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏&講座シリーズも、いよいよ終盤にさしかかりました。

 今回はピアノ・ソナタ第30番および第31番についてお話されました。これで第32番を残し全曲のピアノ・ソナタを概観することになるのですが、これら後期のソナタ群は、ベートーヴェン自身の音楽観にも色々と変化が見えるようです。「月光」「テンペスト」「熱情」といった通称のあるソナタが持つ明確な曲想や音楽の方向性は希薄になり、代わりに様々な雰囲気や和音の中を移ろうようになった終盤のソナタには、この作曲家が歳を重ねるごとに出逢った多くの人生経験も含まれているかのようです。

 特に松本先生が今日中心に採り上げられたのは第30番の第1楽章。というのも、まさにこの楽章の在り方こそ、上記で述べたようなベートーヴェンの音楽観の変化を如実に反映しているからです。冒頭の8小節間だけでもその瞬間に響きが変わる様相を再現するには、それまでの古典主義の楽曲のように「旋律を明快に出す」ことを意識するよりも「それぞれの瞬間にどのような気持ちが浮かんでいるのか」を意識するほうが適しているようです。さらにここで松本先生が例をあげたのはバッハの《マタイ受難曲》のコラール。よく聴いてみると、コラールの雰囲気とこの1楽章の雰囲気はとても似ています。宗教的で神秘的な雰囲気に、人間的な心の移ろいを加えたもの、これがこの第30番のソナタあるいはその第1楽章であると考えると、そこで必要なのは大きな振れ幅の強弱や曲想の変化による表現よりも、即興的ながらも繊細で起伏に富んだ音楽の表現だと言えます。松本先生がこの第30番の解説中に強調していたのは、ベートーヴェンのフォルテの使い方が以前とは異なっているということです。よってこの作品では一番大きな音量が欲しいところにフォルテ記号があるというよりも、一番心を込めて弾いてほしいところにフォルテがついている、と解釈することが必要です。一方、第31番のソナタは、対比の効果が最大限に表現された作品。こちらの作品の解説では、松本先生が毎回の講座でなさる音楽に物語をつけながらの語りがとても興味深いものでした。

 ベートーヴェンの終盤のピアノ・ソナタは非常に奥深い点がたくさんありながらも、特に30番は決して演奏機会が多いとはありません。しかしながら本日の講座を経てこの作品の魅力に惹きこまれた方も多いのではと思います。

(A.T.)

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