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田崎悦子 大人のためのピアノ・マスタークラス 開催レポート
Joy of Music 40+ Vol.9 
“田崎マジック”と呼ばれる2回のレッスンによって驚くべき変化が!!
第2回 2017年2月17日(金)10:00開場 10:30〜12:30 
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 本日は、自らピアニストとして国内外で活動するのみならず、後進の指導や生涯学習のサポートなどピアノの指導も熱心にされてきた田崎悦子先生をお迎えして「大人のためのピアノ・マスタークラス」が開講されました。このシリーズは今回でなんと9回目。ピアノそして音楽を生涯の楽しみにしたいという3人の受講者を対象に、田崎先生が公開でレッスンをされます。この企画の特徴は2週間空けて2回のレッスンを行うこと。受講生自身が演奏の変化を体感でき田崎先生から次のステップを示唆いただけるとともに、聴講生にとってもピアノの上達の過程を見ることの出来る、大変有意義な企画となっています。

 最初に受講された堀内まり子さんは、バッハのパルティータ第1番を演奏。前回に比べて堀内さんの演奏に音色やフレージングの工夫が見られ、「自分で音楽に色付けをしたい」という意志が芽生えたことを読み取った先生は、「自分の版を作ること」すなわち今頭の中にある工夫を楽譜上で計画的に形にすることを提案。バッハの楽譜にはほとんどアーティキュレーションや強弱・曲想の指示がないのですが、それは当時楽譜にそうした意図まで記載する習慣が無かったからであり、決して「表現を抑える」ことを意味しているのではないことを、先生はお話されました。またバッハの場合ポリフォニックな楽曲でどう音楽を立体的に聞かせるかも難しいところです。先生は和音ではソプラノを響かせること、敢えて内声をひそやかに弾くことで内声が聴こえやすくなること、長い音価の外声部は特に大切に延ばすことなど、声部を弾き分ける技術についても様々な指示を出されていました。

 次に受講された山口奈穂さんはブラームスの《幻想曲集》から第1番、第4番、第7番を演奏。山口さんの音に前回よりもうんと厚みが出て、音楽の呼吸も感じられるようになったことを褒められた上で、先生は「もっとイメージを膨らませる」ことを提案。音楽の変化に対して自分でストーリーをつけてみたり美しく聴かせたいフレーズを声に出して歌ってみたりして、自分の楽曲に対するイメージを広げてゆくことで、自然で表情豊かな音楽を生み出すことが出来るようになります。またブラームスのような重厚な音楽の場合、動きの激しい音型でも整然とした音色が必要です。田崎先生は和音のバランスに特に留意するよう指示を出されながら、山口さんの音楽をさらに美しく仕上げてゆきました。

 最後に受講されました田中淳子さんは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情」の第2楽章、第3楽章を演奏。田崎先生は田中さんの演奏に宿るようになった炎を、今度はいかに最大限に緊張感のなる音楽へと転じさせるため、特に第3楽章のテンポ指示が「アレグロ・マ・ノン・トロッポ(快速に、しかし甚だしくなく)」であることを指摘されました。第3楽章は技術的に難しい部分も多く曲調も激しいため、テンポがどんどん速くなったり細かいパッセージが疎かになってしまったりしがちです。先生は「たずなを引き締めているからこそ音楽には摩擦が生まれ炎が生まれる」と仰った上で、自分の音が1つ1つしっかり聴けるテンポで演奏すること、付点のリズムを正確に演奏すること、アルペジオを浮き立たせず音楽の呼吸の中で奏でることなどを、綿密に指示されました。一方の2楽章では敢えて細かい指示を出さず田中さんのイメージを大切にすることで、田中さんの音楽性を引き出されていました。

 音楽が生涯の友となるには、素敵な指導者に出会うことが欠かせません。田崎先生のレッスンはしばしば「田崎マジック」と呼ばれ、多くの受講生をより音楽を楽しく美しく演奏できるよう導いてゆきます。今日の公開レッスンのような企画がこれからも存続し、音楽を心から愛する方が増えることを願います。

(A. T.)

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