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菅野 雅紀 さらに上をめざすピアノ公開講座
《ショパン編》全4回 開催レポート
会場:カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ
第4回 2016年10月12日(水) 10:30〜12:30 

  

 4回にわたって開催されている菅野先生のレクチャーも今回が最終回となりました。取り上げられる楽曲は当初から予定されていた《バラード1番》に加え、特別企画として、これまでご来場されたお客様のリクエストにお答えして、《スケルツォ1番》と《バラード4番》が選ばれました。

 まず先生は《バラード1番》を取り上げられられました。前回までと同様、先生はまず曲が作られた背景や、ショパンがどのようにこの曲をイメージしていたか、という歴史的な背景を説明されるのですが、この解説も非常にわかりやすく、音楽そのものを聴く際にも、ショパンがどのように考えながら曲を作ったのだろうか、どのように表現してほしかったのだろうか、というような想像力が湧くような心持ちがしました。奏法の説明では、とりわけ最初の一二段目で考えなければいけないことが多い、と先生はおっしゃいます。Pesanteはどのように体重をかけるか、ルバートはどのように使えばいいのか、冒頭の音量はどれくらいが適切なのか……。これらの疑問に、先生はショパンが書いた他のバラードを参照しながら答えていきます。また、激しい部分の後に美しい旋律が現れますが、その移行部分で左手に現れる音形を「休戦のラッパの号令」と読んで特徴づけしているのにはとりわけ頷かされました。

 次に先生が解説されたのは、《スケルツォ第1番》です。先生はこの曲を評して「愉快にならないスケルツォ」とおっしゃいました。スケルツォは日本語で諧謔曲、諧謔は「おふざけ」のことで、普通はスケルツォと言えば愉快な曲想が特徴となるはずなのですが(ショパンの《ピアノ・ソナタ3番》の第2楽章を思い出してみましょう)、この《スケルツォ第1番》では全くそうではない、と指摘されていました。先生が中心として取り上げられたのは、テンポの急速な主要部分の音楽のキャラクターと、ショパン自身の演奏が「筆舌に尽くしがたい」と言われていたという祈るようなトリオ、そしてそれらをどう反復して曲を構築していくか、という話題でした。

 最後に、《バラード4番》の解説です。冒頭部分のこだまするようなソの音をどう演奏するか、曲が進むに連れて次第に「発展していく」と先生が性格づけられた有機的な音楽の演奏法、ショパンの充実した対位法の問題……様々な話題が取り上げられましたが、そのなかで、特に印象に残り、先生も強調されていたのはテンポの問題でしょう。この曲には大きなテンポ変化(アレグロからモデラートへ、など)がない曲なので、最初のソ、ソ、ソ……のテンポが楽曲の基本的なテンポになるはずなのです。このテンポによって「一本背骨を通すこと」で、楽曲に統一感が生まれる、と先生はおっしゃっていました。

 全曲にわたり、冒頭から結尾までの細かい強弱・アーティキュレーションの付け方や指の使い方といった演奏法、全体から細部までの楽曲の解釈を、菅野先生はときにショパンの他の曲にも結びつけることで説明されており、とても説得力があり、わかりやすいものでした。ピアノを演奏される皆様にとって得るものが大きい講座だったのではないでしょうか。菅野先生の次回の講座も、楽しみです。

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