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菅野 雅紀 さらに上をめざすピアノ公開講座
《ショパン編》全4回 開催レポート
会場:カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ
第2回 2016年7月25日(月) 10:30〜12:30 

  

 菅野先生のショパン講座、第2回となる今回は、《練習曲集》作品10から第10番変イ長調と第12番ハ短調(「革命」)、そしてノクターンから作品9-2と作品62-2が取り上げられました。

 ショパンの《練習曲集》は音楽高校や大学の試験でも課題になるなど、ピアノに真剣に取り組む生徒や彼らを教えている先生方にとっては、必ず通らなければならない道です。今回取り上げる作品10には、一曲一曲に「練習曲」としての課題が設けられている上に、全体に通底する「レガート奏法」というテーマがあるそうです。先生はこの点をショパン自身のピアノメソードを手がかりに解説されていました。またここでは、楽譜のエディション(版)の問題も取り上げられていました。とりわけ練習曲を演奏するにあたっては、版の選択は慎重にしなければいけない、と先生は警告されます。作品10-10を例として、パデレフスキ版、エキエル版、コルトー版をスライドに映しながら、この作品の冒頭で(特にコンクールの評価において!)重要なポイントとなる「4種類のアーティキュレーション」に関して、それぞれの版で扱いが違うことが、とりわけ指摘されていました。作品10-10の講座では、アーティキュレーションに関する話の他にも、フレーズごとのペダルの変化や、肘の扱い方などが触れられていました。続けて作品10-12では、とりわけ「忙しい」左手の奏法や、ショパンにおける「力強さ」や「硬さ」を中心的に解説されていました。

 2曲のノクターンの総論で先生は、ノクターンの創始者であるジョン・フィールドと、ショパンを比較されていました。ショパンはフィールドの作品を弟子のレッスンに使っていたそうで、楽譜を見ながら実際に曲を聴いてみると、二人のノクターンの共通性や影響関係が見て取れ、非常に興味深く感じました。有名な作品9-2は、スタッカートとスラーが組み合わされた「ポルタート」という奏法や、ペダルの使い方、強弱など、様々な観点から解説されていましたが、曲自体の自由さと伸びやかさを活かして楽しめると良い、と総括されていました。最晩年の曲となる作品62-2は、ショパン自身が体の衰えを自覚してか、どこか寂しげな曲です。しかし、曲の内容は決して単純なものではなく、ポリフォニーや転調が細かく組み合わされた、一種のファンタジーになっている、と先生は指摘されていました。演奏にあたっては、繰り返しが多い曲のなかで、単調さを避けるために内的なフレーズ、先生の言葉で言うと「インナーフレーズ」を意識して表情をつけると良い、とアドヴァイスされていました。

 普段見過ごされがちな楽曲の細部にわたって、弟子たちの証言や楽譜のテキスト、またご自身の演奏体験から詳しく、やさしい語り口で解説される先生のアプローチは非常に分かりやすく、興味深いものでした。第3回は「英雄」ポロネーズと《幻想即興曲》、《子守歌》を取り上げられ、さらに第4回では受講者のリクエストに合わせて取り上げる曲を決定されるとのこと。曲が何になるのかを含め、次回以降の講座も非常に楽しみです。

(A.Y)

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